Home > CD & DVD > New Releases

 CD & DVD/BD



New Releases - 2024年04月 発売タイトル

Search results:60 件 見つかりました。

  • 詳細

    管弦楽のない協奏曲 - シューマン/J.S. バッハ/ラフマニノフ(ゲヴレック)

    1992年トルコ生まれの若きピアニスト、サーリ・ジャン・ゲヴレック。2011年にはロンドンのロイヤル・カレッジ・オヴ・ミュージックに入学、ドミトリー・アレクセーエフに師事してアーティスト・ディプロマを取得し、エリザベート王妃音楽院のアーティスト・イン・レジデンスを務めています。彼にとって初のフル・アルバムとなる今作は、「管弦楽のない協奏曲」がテーマ。シューマンのソナタ第3番は、その規模の大きさからまさに「管弦楽のない協奏曲」あるいは「グランド・ソナタ」と呼ばれたもの。続いて協奏曲の楽器の対照を鍵盤楽器1台で表現したバッハの傑作、そしてラフマニノフの規模の大きな作品へと繋がるプログラム。ゲヴレックの深い作品解釈と多彩な表現力が、ばらばらの時代の作品たちを有機的に関連付けています。(2024/04/12 発売)

    レーベル名:Fuga Libera
    カタログ番号:FUG826

  • 詳細

    J.S. バッハ:フーガの技法(ハッキネン)

    ボブ・ファン・アスペレンやピエール・アンタイに師事し、今や北欧を代表する古楽鍵盤奏者・指揮者として目覚ましい活躍を繰り広げるハッキネンがフーガの技法を録音しました。ハッキネンはバッハの死後出された出版譜ではなく1740年代に書かれた自筆譜の順番で演奏しており、その理由を「作品の持つ周期性と対称性がわかり易いから」としています。同時に、部分的には出版譜の解釈を採用し、未完のコントラプンクトゥス14は含まず、古風なコンソート・スタイルに通じるコントラプンクトゥス12はヴィオール・コンソートで(ハッキネンは参加せず)、トリオ・ソナタの書法を採り入れたコントラプンクトゥス13はヴァオリンとチェンバロのデュオで演奏しています。使われた楽器はアンドレアス・ルッカースが1614年に製作した2段鍵盤のオリジナルで、後に作曲家ジョン・ブロウの手に渡り、ヘンデルも演奏した記録も残っています。録音で聴くと、非常に豊かな響きを持つ楽器のようです。原盤ブックレットの作品解説にはバッハの伝記作者でもある音楽史家フィリップ・シュピッタ(1841-1894)が1880年に書いたものを採用しています(英語・ドイツ語)。(2024/04/12 発売)

    レーベル名:Ondine
    カタログ番号:ODE1437-2

  • 詳細

    トーマス:ハープとピアノのための二重奏曲集 4 (デュオ・プラクセディス)

    ウェールズ出身のジョン・トーマスは、18世紀後半に最も称賛されたハープ奏者・作曲家の一人。ヴィクトリア女王専属のハープ奏者を務め、その洗練された技巧で広く愛されました。この第4集には当時流行していたマイアベーアの歌劇《ディノラ》や、ベッリーニの《ノルマ》の旋律を用いたパラフレーズ、イタリア歌曲集でおなじみのアルディーティの作品を行進曲風にアレンジした「くちづけ」、トーマス自身のハープ協奏曲のアンダンティーノをピアノとハープのために編曲したものなどが収録されています。シリーズを通じて演奏する「デュオ・プラクセディス」は18世紀末から20世紀初頭までの知られざるハープとピアノ二重奏曲の復興に力を注ぐアンサンブルです。(2024/04/12 発売)

    レーベル名:Toccata Classics
    カタログ番号:TOCC0582

  • 詳細

    ランバート:金管とオルガンのための音楽(ジャーミー/マーシュ/ラッシュフォート/チェスター・コンコルディア・ブラス・アンサンブル・ランバート)

    1951年イギリス、バースに生まれた作曲家、指揮者リチャード・ランバート。彼の父と祖父が地元の教会のバンドマスターを務めており、とりわけ父が優れたコルネット奏者であったため、幼い頃からオルガンとブラスの音に触れて育ちました。やがて自分でもトランペットを演奏するようになり、16歳頃からは友人たちが演奏するための曲を作曲していたといいます。以降彼は様々なアンサンブルで演奏、多彩な経験を積んできました。同時にオルガンのレッスンも受けたランバート、このアルバムに収録された一連の作品は、主として彼の友人や知人の特別な場面を記念するために作曲されたものです。作品はどれもプーランクやウォルトンを彷彿させる雰囲気を持ち、祝祭的なムードの中にもユーモアをにじませたユニークな作風が魅力です。(2024/04/12 発売)

    レーベル名:Toccata Classics
    カタログ番号:TOCC0718

  • 詳細

    チュピーティス:手稿譜によるピアノ小品集 1 (ルーセ)

    ラトヴィアの作曲家ヤーニス・チェピーティス。ラトヴィア音楽院でヤーセプス・ヴィートルスから作曲を、ヤーニス・メディンシュから指揮を学びました。その後パリでピアノをカサドシュとギーゼキングに師事、ラトヴィアに戻ってからは放送局で働きます。終戦後はラトヴィア国立音楽院の室内楽クラスの教授を務めました。彼の作品は母国ラトヴィアでもほとんど知られておりませんが、実は驚くほど多作家であり、6つの交響曲をはじめ、歌劇やバレエ、室内楽、カンタータや民謡編曲など数多くの作品を残しています。中でもピアノ曲は約100曲確認されており、その多くは小品です。このアルバムに収録されているのは、ピアニスト、ノラ・ルーセがチェピーティスの手稿譜を用いて演奏した様々な小品で、スクリャービンやラフマニノフの雰囲気を湛えながらも、ラトヴィア民謡の香りも感じられる美しい作品を聴くことができます。(2024/04/12 発売)

    レーベル名:Toccata Classics
    カタログ番号:TOCC0721

  • 詳細

    センター:器楽と室内楽作品集 3 (フェイェシュ/レンチェシュ/ギルド)

    スコットランドの作曲家ロナルド・センターの室内楽作品集。アバディーンに生まれ、地元でピアノとオルガンを学んだセンターは、1943年にアバディーンシャーのハントリーに移り6年間の教師生活を送った後、作曲家として活動。1944年からは彼の作品がBBCで放送され人気を博しています。「スコットランドのバルトーク」と異名をとるほど、荒々しいエネルギーを備えた作品を書いていますが、作品の公開には意欲的ではなく、現在でもごく一部の作品が出版されているのみです。彼は基本的にはピアノ曲に力を注いだ作曲家であり、アルバムの最後に置かれた一連の「前奏曲とフーガ」では、対位法を自在に操る手腕も見せています。一方、1945年に出会った2人のポーランド兵(一人はチェリスト、もう一人はヴァイオリニスト)に触発され、このアルバムに収録されたソナタなどいくつかの室内楽作品も書き上げており、これらはブリテンを思わせる味わいを持っています。ピアノを演奏するクリストファー・ギルドは、これまでにもスティーヴンソンやワーズワースなど、イギリス近現代作品の解釈で高く評価されるベテランです。(2024/04/12 発売)

    レーベル名:Toccata Classics
    カタログ番号:TOCC0723

  • 詳細

    マーラー:交響曲第3番(シュトゥッツマン/テルツ少年合唱団/バイエルン放送女声合唱団&交響楽団/ヤンソンス)

    2010年はヤンソンスがマーラーの3番に取り組んだ年でした。2月にコンセルトヘボウ管(RCO)を指揮した演奏はCDと映像でリリースされ、11月にはRCOとの来日公演でも演奏して聴衆に深い感銘を残しました。このCDは、その翌月にミュンヘンで行われたバイエルン放送交響楽団とのライヴ録音。常に準備周到だったヤンソンスですが、これはまさに万全の状態で臨んだ演奏会だったと言えるでしょう。各楽章の演奏時間はRCO盤とほぼ同じで、ここでもヤンソンスの解釈が迷いのないものであったことがうかがわれます。全6楽章、100分近い長丁場を弛緩することなく曲の持つドラマ性を提示しながら、丁寧にオーケストラをまとめるヤンソンスの手腕の見事さ。第4楽章でのシュトゥッツマンの独唱は暗闇の中に射し込む一筋の光のように鮮烈な輝きを放ち、第5楽章での少年たちの歌声はまさに天使の合唱、そして最終楽章の荘厳かつ壮麗なクライマックスはオーケストラの実力を存分に見せつけるとともに、ライヴならではの高揚感に満ちています。(2024/04/05 発売)

    レーベル名:BR-Klassik
    カタログ番号:900194

  • 詳細

    R. シュトラウス:歌劇「無口な女」(ヴンダーリヒ/プライ/ハルシュタイン/ホッター/バイエルン放送響/ヴァルベルク)

    【バイエルン放送交響楽団創立75周年。豪華歌手を揃えた未発表音源をCD化】《無口な女》は1934年に完成され、1935年6月24日にカール・ベームの指揮によりドレスデンで初演されましたが、台本作者のツヴァイクがユダヤ人だったこともあって3回の上演だけでナチスによって禁止処分となり、復活は終戦後の1946年まで待たねばなりませんでした。作品の舞台は1780年頃のロンドン近郊。年老いた元軍人モロズス卿と、彼の甥でオペラ歌手のヘンリー、彼の妻アミンタ(高度なコロラトゥーラ歌唱が求られる)、《セビリアの理髪師》のフィガロを彷彿させる理髪師と彼に横恋慕する家政婦など様々な人物が登場。ドタバタ騒ぎの末、最後はモロズス卿の「Wie schon ist doch die Musik - aber wie schon erst、 wenn sie vorbei ist! 音楽は美しい、しかしもっと美しいのは音楽が終わったあとだ」の印象的な独白で幕を閉じます。このCDで聴けるのはその抜粋(名場面集)で、1960年11月6日のテレビ向け公開収録の前日と前々日に行われていたセッション録音。モロズス卿にハンス・ホッター、ヘンリーにフリッツ・ヴンダーリヒ、理髪師にヘルマン・プライと、前年夏にベームとウィーン・フィルがザルツブルクで上演した際と同じ豪華キャストによる歌が聴きものです。指揮はN響への客演でも親しまれたハインツ・ワルベルク。ドイツとオーストリアで歌劇場やオーケストラのポストを歴任し、ウィーン国立歌劇場では450回以上も指揮をした実力者です。(2024/04/05 発売)

    レーベル名:BR-Klassik
    カタログ番号:900219

  • 詳細

    フランツ・シュミット:歌劇「フレディグンディス」(ヴェイソヴィチ/エーゲル/ブンガー/サンドゥ/ウィーン放送合唱団&交響楽団/メルツェンドルファー)

    【フランツ・シュミット生誕150周年記念、歌劇《フレディグンディス》世界初録音盤が登場!】1914年、ウィーン宮廷歌劇場で初演された歌劇《ノートルダム》が大成功を収めたことを受け、フランツ・シュミットが次の歌劇の題材として選んだのがフェリックス・ダーンの『フレディグンディス』でした。舞台は6世紀のフランク王国。赤い髪を持つ召使いフレディグンディスが輝かしい美貌と奸計で国王キルペリク1世の妃の座と莫大な富を手に入れるも、数々の悪行を重ねた末に破滅していく様を、ワーグナーやリヒャルト・シュトラウスを思わせる半音階を用いた濃厚な音楽で描き出しています。主役のフレディグンディスを歌うのはクロアチア出身のドゥーニャ・ヴェイソヴィチ。強靭な声を生かし、メゾ・ソプラノとソプラノ両方の役柄でワーグナー歌手としてバイロ イトやザルツブルクで絶賛されました。指揮のエルンスト・メルツェンドルファーはザルツブルク・モーツァルテウムでクレメンス・クラウスに師事、史上初めてハイドン交響曲全集を録音すると共に現代音楽に至る広いレパートリーを持ち、数多くの作品を初演しました。(2024/04/05 発売)

    レーベル名:Orfeo
    カタログ番号:C380012

  • 詳細

    夕べの歌~ブラームス:クラリネット・ソナタ第1番&第2番(赤坂達三)

    赤坂達三が満を持して放つ、実に12年ぶりのフルアルバム。ブラームス最晩年の傑作と滋味溢れるシューマンの名作を聴く。■アルバム「夕べの歌」に寄せて 趣味でクラリネットを購入した私は、もっとクラリネットのことが知りたくなり、初めて聴いたレコードはレオポルト・ウラッハのブラームスのソナタでした。そして次に聴いたのは、アルフレート・プリンツの演奏でした。 後にこのソナタは、ブラームスの友人であったリヒャルト・ミュールフェルトが初演し、後継者がウラッハ、さらにその後継者がプリンツであったことを知りました。 私がパリに留学中の時、ザルツブルクの音楽祭でプリンツがレッスンしていることを知り、いろいろなワクワクした思いを馳せてプリンツのもとへ習いに行きました。ブラームスのソナタ第1番の第 3 楽章は、ワルツでは無くイタリアニータのレントラーであるとか、ソナタ第2番の第 2 楽章は、アパッショナータ・マ・ノン・トロッポ・アレグロなんだよ等々、いろいろと丁寧にアドバイスを頂いたことが懐かしく思い出されます。 あれからいろいろな勉強や経験をしながら歳月が経ち…。 ブラームスの時代は音源も無いため、もちろん録音は残っていません。このブラームス最晩年の名曲に対して果たして自分はどのような演奏をしたら良いのだろうか…と逡巡していた時に、音楽プロデューサーの武藤敏樹さんからお誘いを受けて齊藤一也さんのピアノ・リサイタルを聴きに行きました。 彼の演奏を聴いて心から齊藤さんと共演したいと思い、CD アルバムのお話をさせて頂きました。 実際にリハーサルをしたところ、ピアノのテクニックはもちろんのこと(ブラームスはリストと同じくらいのピアノの名人)、齊藤さんは実は作曲家でもあり、アナリーゼや和声、更にはここのフレーズやモチーフはこうしたらどうでしょう等々、決して妥協しないで親身になって音楽を創る姿勢はとても素晴らしく、まさに想像を遥かに超える素晴らしい実りのあるリハーサルを重ねることができました。 収録は音楽的に精通している長年の友人でもある武藤プロデューサーの元で、シューマンの名曲2曲と共に無事に終えることができました。皆様の多大な協力を得て、当初の不安を払拭する素晴らしい収録ができて本当に幸せです。 そして近々、この CD アルバムを手にした方々と音楽を共有できることを心から楽しみにしています。2023 年春 レコーディングを終えて 赤坂達三■演奏者についてのエッセイブラームスとシューマンの出会いのように… かつて「クラリネットの貴公子」「王子」と呼ばれた赤坂達三は1964年生まれ。今回、ブラームスとシューマンの作品でピアノを担った齊藤一也(1990―)とは26歳の年齢差がある。20歳のブラームスがハンブルクからデュッセルドルフに現れた時、シューマンが43歳だった史実に私は思いを重ねながら、編集が終わったばかりのでき立てホヤホヤの音源を聴いた。 国立音楽大学を卒業してパリに留学、国内外数々のコンクールで第1位に輝き「40年に1人の逸材」と評された赤坂が日本国内で演奏活動を本格化したのは1990年代半ばだった。インディーズ(独立系)レーベル「オレンジノート」(現マイスター・ミュージック)からリリースした「チャールダーシュ」が注目を集めていた当時、ディスクでもピアノを弾いていた寺嶋陸也が作曲したオペラ「ガリレイの生涯」の上演(1995年3月3&4日、草月ホールの「オペラシアターこんにゃく座」主催公演)を観に行くと、作曲者が指揮する小編成のオーケストラ「イ・ソリスティ・コペルカーニ」のちょうど真ん中くらいに座り、嬉々としてクラリネットを奏でる赤坂の姿があり、驚いた。売り出し中のソリストながら、オペラの伴奏でも変わらない精彩を放っていたからだ。 ほどなくしてビクターエンタテインメントへ移籍、「ソワレな夜」「異邦人」のアルバム2点を1995年から1996年にかけてリリース。何度かインタビューし、記事を書くうちに親しくなり、1997年には矢部達哉(ヴァイオリン)、川田知子(同)、川本嘉子(ヴィオラ)、金木博幸(チェロ)の弦楽四重奏団とモーツァルトの「クラリネット五重奏曲」で共演する演奏会を勤務先の新聞社主催で作り、アンコールにはその年のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)で矢部が演奏した「あぐり」のテーマを同じ編成に編曲、赤坂の妙技でたっぷり味わう幸運も授かった(2005年にはもう1度、三鷹市芸術文化センターで企画した公演に参加を依頼、8年前以上に冴えた音楽を奏でてくれた)。 1998年以降はソニーミュージックからのリリースがメインとなり、当時は同社勤務、現在は「アールアンフィニ」レーベル代表のプロデューサー&レコーディングエンジニア、武藤敏樹との長期にわたる共同作業が始まった。1998年9月リリースの「英国の薫り」を皮切りにアコーディオンのcobaやヴォーカルの吉田美奈子も交えた「ポルト・ドゥ・パリ」、ゲーデ・トリオらと共演したモーツァルト&ブラームスの「クラリネット五重奏曲」、ウィーン室内管弦楽団を〝吹き振り〟したモーツァルトの「クラリネット協奏曲&オーボエ協奏曲(クラリネット編曲版)」などの名盤を次々に制作した。 ちなみに武藤は赤坂より1歳年長、ほぼ同年代の関係もあって気が合うのだろう。武藤がアールアンフィニを立ち上げると赤坂も加わり、2010年にフランス近代音楽を集めた「オマージュ・ア・パリ」(ピアノは浦壁信二)、2012年にシャンソンやミュージカル、オペラの名旋律を中心にした選曲、今は亡き名ピアニストの斎藤雅広との「ザ・スーパーデュオ」名義で「ふたりでお茶を」をリリースした。今回のブラームス&シューマンは赤坂にとって、アールアンフィニでの第3作に当たる。 ピアノの齊藤一也も同じレーベルから2022年10月、ラフマニノフとリストの作品を収めたソロ・アルバム「ザ・パッション」を発売。磨き抜かれた技巧と燃焼度の高い演奏は、多方面から高い評価を受けた。彼を最初に聴いたのは2006年8月、東京音楽コンクールのピアノ部門本選の審査員を私が務めた時で、東京藝術大学音楽学部附属高校(芸高)2年生の16歳。結果は1位なしの2位だったが、まだ若いのに慌てず騒がず、じっくりと自身の音楽をきわめる姿勢が強く印象に残り、折に触れ聴き続けてきた。30代に入り、いよいよ王道本物の真価を発揮しつつある。 赤坂と齊藤、そして武藤が長期のリハーサルを繰り返し、1年以上の時間を費やして完成したアルバムからはシューマンからブラームス、赤坂&武藤から齊藤…と、世代から世代へと受け継がれてきた音楽のバトンが幾重にも重なって聴こえる。 「ソナタ第1番」の再生が始まると先ず、ピアノがブラームスに欠かせない音の重み、厚みを適確に備えるなか、クラリネットが弱音から解釈を組み立て、枯れたニュアンスで旋律を歌う対照の妙に耳を奪われた。第2楽章でクラリネットが少ない音の数の中に無限の味わいをこめると、ピアノは第3楽章で右手の弱音の美しさを際立たせる。第4楽章の急速なパッセージでは全く別の光景が広がり、人生の最終場面の輝きを細大漏らさずにしとめていく。続く「第2番」、クラリネットが音の温かさを増し、ブラームスのメランコリー、こみ上げる思い、物憂げな瞬間をピアノともども丁寧に再現しつつ、次第に透明な境地へと向かう。ブラームスが最後に書いた変奏曲の第3楽章ではクラリネット、ピアノが丁々発止と渡り合い、すべてやり遂げた人間の熱狂を賛美して終わる。 カップリングのシューマン2曲は壊れそうなほどに繊細な演奏だが、躍動感にも事欠かない。赤坂はドイツ留学の経験がなく、むしろフランスから帰国した後の日本でウィーン・アルティス弦楽四重奏団やゲーデ・トリオとの共演を通じ「ドイツ的な音楽の語法に磨きをかけてきました」と自負、パリとベルリンの2都市に留学した齊藤が繰り出す様々なアイデアにも柔軟に対応する。録音を終えた時、2人は「ブラームスからシューマンにかけての全曲が実は夜想曲、夜の音楽なのではないか」(赤坂)との思いを抱いたという。キャリアの終盤に差しかかった演奏家と、長い勉強時代を終えて完全にプロフェッショナルなキャリアを歩み出したばかりの演奏家の「全く初めての共演」(齊藤)が長期の録音プロジェクトを通じて実現し、絶妙な音楽の時間をディスクに刻印した。解説:池田卓夫(音楽ジャーナリスト@いけたく本舗(R))(2024/04/03 発売)

    レーベル名:ART_INFINI
    カタログ番号:MECO-1082