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いま日本で一番売れているクラシック音楽書
1冊でわかるポケット教養シリーズ
吉松隆の『調性で読み解くクラシック』
「運命」はなぜハ短調で扉を叩くのか?
作曲家・吉松隆が解き明かす、ありそうでなかった「調性」本!!
クラシックの長調、短調にはワケがある。
– インタビュー –
『吉松隆の調性で読み解くクラシック』が、音楽書の話題を集め増刷が続いています! ヤマハ銀座店の書籍売上ランキングでは発売から1年間連続1位を記録している本書は、 専門的に音楽を学ぶ人だけでなく、幅広い層に支持されています。 そこで、今回は著者である作曲家・吉松隆さんに、この本の魅力についてお話をうかがいました。 本には書けなかった裏話をたっぷり載せちゃいます! Q. この本を書こうと思ったきっかけは? A. ある出版企画の方から、クラシックの名曲を調性ごとにハ長調の名曲、ト長調の名曲というふうに紹介するような本を作れないか、という問い合わせがあったのが始まりです。 ちょうどこの本の最終章にあたる部分がメインにあり、それを説明するうえで、なぜこういう曲が生まれたのか、それぞれの曲がどう違うのか、そもそも調性って何なのか? ……などについても説明しないといけない、ということになった。それがだんだんふくらんで、この本ができあがったというわけです。 ![]() Q. 作曲家にとって、調性はどれくらい重要な存在なのでしょうか? A. クラシックの曲って「交響曲第5番ハ短調」のように、まず曲名の中に調性が書いてあるでしょう。 モーツァルトやベートーヴェンの時代は、現代より曲の調性が重要視されていました。というのも当時の楽器は、今ほど自由自在に移調したり、どんな音でも出したりできなかった。 金管なんて、ドミソしか出せない構造の中で始まったものだし、ティンパニーもドとソしか出せないんだから、最初にチューニングを決めてくれないと叩けない。「これからヘ長調の曲やるよー!」と言ったら、ヘ長調を吹ける楽器を集めなきゃならない、といった歴史的背景から、楽曲に調性が表記されるようになったんです。 また、楽器ごとに得意な調と苦手な調がありますが、一般的には意外と知られていませんよね。ピアノを弾く人なら#と♭が多い曲は難しそう、というくらいは知っていますが、実は弦楽器は#系、管楽器は♭系が鳴らしやすい調性なんです。作曲家はそういったことを踏まえて曲の編成を考えるわけです。 現代では、いったん調性をなくして新しいものを一から作る“現代音楽”の手法が主流ですが、僕自身は「調性無くして何が音楽だ!」だと思っているので、逆らって調性を用いた曲を書いています(笑)。 そんなわけで、この本では調性がいかに重要なものであるかについても解説しています。 ![]() Q. ヤマハ銀座店をはじめ、楽器店や書店の音楽書ジャンルで1位を記録し続けているそうですが、読者が食いつく理由は何だと思いますか? A.うーん、どこがどう気に入っていただけたのかはよくわかりません(笑)。この本の内容は、難しくはないけど易しくもないというちょっと変わった視点から説いていますから。 ただ僕は独学で音楽を学んだので、そもそも音楽の基礎から順を追って勉強していないんです。十代の頃までは普通にポップスを聴いていて、興味は音楽より物理や天文学など理工科系の方にありましたし。それが中学3年生の時に突然クラシックを聴き始め、「何これ? 面白いじゃない!」とそこから逆行するように勉強し始めた。 結果、作曲家としてはプロなんですが、興味や感覚はどこまでも素人なんですよね。ですからこの本は、そういう自分が素朴に興味を持った順に掘り下げてゆき、プロの現場での実体験と照らし合わせていったわけで、そういうところが、読者の皆様におもしろいと思ってもらえたのかも知れないですね。 ![]() Q.吉松さんが考える“調性の魅力”とは? A.僕の音楽人生は、「何でこの曲聴くと涙が出るの?」というところからスタートしました。そこで、いろいろ曲を聴いたり楽譜を読んだりしているうちに、どうやらハーモニーの塊が動く、つまりあるキーからあるキーに変化する瞬間、自分は感動しているのだということがわかってきました。 ずっとハ長調のままだったら、何にもおもしろくないでしょう? ところがト短調からハ長調に変わる瞬間、私たちははっとしたりする。泣いてるだけ(短調)、笑っているだけ(長調)じゃおもしろくない。泣かせるところから始まって、笑ってちょっと怒らせて、最後にニッコリ解放する。クラシックの複雑な曲というのは、作曲家たちが手練手管を尽くした総決算とも言えるのです。 恋愛も「好きです、結婚しましょう」「はい!」だけだと、おもしろくも何ともないでしょう。親が反対するとか、身分が違うとか、生き別れになってしまうとか、さまざまな障害があった後にハッピーエンドがあるという波乱万丈こそが感動を呼ぶ。結局、作曲家がいかにいろんな要素、調性やテンポや楽想のコントラストを曲中に投入するかで、楽曲のおもしろさ深さが変わってくるんです。キャラクターが立った単一の調だけの短い曲もいいけれど、交響曲のようにいろんな調性が登場して、その流れの変化を聴き取ることは、クラシックを聴く醍醐味のひとつなんじゃないかな。 「ロミオとジュリエット」も、「あの子と付き合っちゃダメ」と言われるから余計恋の炎が燃え上がるし、ハードルがあればあるほど成就した時の達成感が違うでしょ(笑)。障害を作るというのも、感動を深めるためのある種のテクニック。映画だって、徹底的に悪役を作らないと、倒したって開放感がない。色々な手持ちのキャラクターや状況を駆使してクライマックスに向けて盛り上げるというのは、音楽や小説、映画などにも共通していますよね。音楽では「調性」が文字通りその「キー」ということなのです。 ![]()
吉松 隆(よしまつ・たかし) |
– アルバム –
吉松隆氏の代表作「朱鷺によせる哀歌」収録
日本管弦楽名曲集
■ 収録楽曲:
外山雄三:管弦楽のためのラプソディ
近衞秀麿:越天楽
伊福部昭:日本狂詩曲
芥川也寸志:交響管弦楽のための音楽
小山清茂:管弦楽のための木挽歌
吉松隆:朱鷺に寄せる哀歌
■ 演奏・録音・解説情報:
演奏:沼尻竜典(指揮)/東京都交響楽団
録音:2000年7月25~27日 東京芸術劇場
解説:片山杜秀
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– コンピレーション –