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赤坂達三

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    夕べの歌~ブラームス:クラリネット・ソナタ第1番&第2番(赤坂達三)

    赤坂達三が満を持して放つ、実に12年ぶりのフルアルバム。ブラームス最晩年の傑作と滋味溢れるシューマンの名作を聴く。■アルバム「夕べの歌」に寄せて 趣味でクラリネットを購入した私は、もっとクラリネットのことが知りたくなり、初めて聴いたレコードはレオポルト・ウラッハのブラームスのソナタでした。そして次に聴いたのは、アルフレート・プリンツの演奏でした。 後にこのソナタは、ブラームスの友人であったリヒャルト・ミュールフェルトが初演し、後継者がウラッハ、さらにその後継者がプリンツであったことを知りました。 私がパリに留学中の時、ザルツブルクの音楽祭でプリンツがレッスンしていることを知り、いろいろなワクワクした思いを馳せてプリンツのもとへ習いに行きました。ブラームスのソナタ第1番の第 3 楽章は、ワルツでは無くイタリアニータのレントラーであるとか、ソナタ第2番の第 2 楽章は、アパッショナータ・マ・ノン・トロッポ・アレグロなんだよ等々、いろいろと丁寧にアドバイスを頂いたことが懐かしく思い出されます。 あれからいろいろな勉強や経験をしながら歳月が経ち…。 ブラームスの時代は音源も無いため、もちろん録音は残っていません。このブラームス最晩年の名曲に対して果たして自分はどのような演奏をしたら良いのだろうか…と逡巡していた時に、音楽プロデューサーの武藤敏樹さんからお誘いを受けて齊藤一也さんのピアノ・リサイタルを聴きに行きました。 彼の演奏を聴いて心から齊藤さんと共演したいと思い、CD アルバムのお話をさせて頂きました。 実際にリハーサルをしたところ、ピアノのテクニックはもちろんのこと(ブラームスはリストと同じくらいのピアノの名人)、齊藤さんは実は作曲家でもあり、アナリーゼや和声、更にはここのフレーズやモチーフはこうしたらどうでしょう等々、決して妥協しないで親身になって音楽を創る姿勢はとても素晴らしく、まさに想像を遥かに超える素晴らしい実りのあるリハーサルを重ねることができました。 収録は音楽的に精通している長年の友人でもある武藤プロデューサーの元で、シューマンの名曲2曲と共に無事に終えることができました。皆様の多大な協力を得て、当初の不安を払拭する素晴らしい収録ができて本当に幸せです。 そして近々、この CD アルバムを手にした方々と音楽を共有できることを心から楽しみにしています。2023 年春 レコーディングを終えて 赤坂達三■演奏者についてのエッセイブラームスとシューマンの出会いのように… かつて「クラリネットの貴公子」「王子」と呼ばれた赤坂達三は1964年生まれ。今回、ブラームスとシューマンの作品でピアノを担った齊藤一也(1990―)とは26歳の年齢差がある。20歳のブラームスがハンブルクからデュッセルドルフに現れた時、シューマンが43歳だった史実に私は思いを重ねながら、編集が終わったばかりのでき立てホヤホヤの音源を聴いた。 国立音楽大学を卒業してパリに留学、国内外数々のコンクールで第1位に輝き「40年に1人の逸材」と評された赤坂が日本国内で演奏活動を本格化したのは1990年代半ばだった。インディーズ(独立系)レーベル「オレンジノート」(現マイスター・ミュージック)からリリースした「チャールダーシュ」が注目を集めていた当時、ディスクでもピアノを弾いていた寺嶋陸也が作曲したオペラ「ガリレイの生涯」の上演(1995年3月3&4日、草月ホールの「オペラシアターこんにゃく座」主催公演)を観に行くと、作曲者が指揮する小編成のオーケストラ「イ・ソリスティ・コペルカーニ」のちょうど真ん中くらいに座り、嬉々としてクラリネットを奏でる赤坂の姿があり、驚いた。売り出し中のソリストながら、オペラの伴奏でも変わらない精彩を放っていたからだ。 ほどなくしてビクターエンタテインメントへ移籍、「ソワレな夜」「異邦人」のアルバム2点を1995年から1996年にかけてリリース。何度かインタビューし、記事を書くうちに親しくなり、1997年には矢部達哉(ヴァイオリン)、川田知子(同)、川本嘉子(ヴィオラ)、金木博幸(チェロ)の弦楽四重奏団とモーツァルトの「クラリネット五重奏曲」で共演する演奏会を勤務先の新聞社主催で作り、アンコールにはその年のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)で矢部が演奏した「あぐり」のテーマを同じ編成に編曲、赤坂の妙技でたっぷり味わう幸運も授かった(2005年にはもう1度、三鷹市芸術文化センターで企画した公演に参加を依頼、8年前以上に冴えた音楽を奏でてくれた)。 1998年以降はソニーミュージックからのリリースがメインとなり、当時は同社勤務、現在は「アールアンフィニ」レーベル代表のプロデューサー&レコーディングエンジニア、武藤敏樹との長期にわたる共同作業が始まった。1998年9月リリースの「英国の薫り」を皮切りにアコーディオンのcobaやヴォーカルの吉田美奈子も交えた「ポルト・ドゥ・パリ」、ゲーデ・トリオらと共演したモーツァルト&ブラームスの「クラリネット五重奏曲」、ウィーン室内管弦楽団を〝吹き振り〟したモーツァルトの「クラリネット協奏曲&オーボエ協奏曲(クラリネット編曲版)」などの名盤を次々に制作した。 ちなみに武藤は赤坂より1歳年長、ほぼ同年代の関係もあって気が合うのだろう。武藤がアールアンフィニを立ち上げると赤坂も加わり、2010年にフランス近代音楽を集めた「オマージュ・ア・パリ」(ピアノは浦壁信二)、2012年にシャンソンやミュージカル、オペラの名旋律を中心にした選曲、今は亡き名ピアニストの斎藤雅広との「ザ・スーパーデュオ」名義で「ふたりでお茶を」をリリースした。今回のブラームス&シューマンは赤坂にとって、アールアンフィニでの第3作に当たる。 ピアノの齊藤一也も同じレーベルから2022年10月、ラフマニノフとリストの作品を収めたソロ・アルバム「ザ・パッション」を発売。磨き抜かれた技巧と燃焼度の高い演奏は、多方面から高い評価を受けた。彼を最初に聴いたのは2006年8月、東京音楽コンクールのピアノ部門本選の審査員を私が務めた時で、東京藝術大学音楽学部附属高校(芸高)2年生の16歳。結果は1位なしの2位だったが、まだ若いのに慌てず騒がず、じっくりと自身の音楽をきわめる姿勢が強く印象に残り、折に触れ聴き続けてきた。30代に入り、いよいよ王道本物の真価を発揮しつつある。 赤坂と齊藤、そして武藤が長期のリハーサルを繰り返し、1年以上の時間を費やして完成したアルバムからはシューマンからブラームス、赤坂&武藤から齊藤…と、世代から世代へと受け継がれてきた音楽のバトンが幾重にも重なって聴こえる。 「ソナタ第1番」の再生が始まると先ず、ピアノがブラームスに欠かせない音の重み、厚みを適確に備えるなか、クラリネットが弱音から解釈を組み立て、枯れたニュアンスで旋律を歌う対照の妙に耳を奪われた。第2楽章でクラリネットが少ない音の数の中に無限の味わいをこめると、ピアノは第3楽章で右手の弱音の美しさを際立たせる。第4楽章の急速なパッセージでは全く別の光景が広がり、人生の最終場面の輝きを細大漏らさずにしとめていく。続く「第2番」、クラリネットが音の温かさを増し、ブラームスのメランコリー、こみ上げる思い、物憂げな瞬間をピアノともども丁寧に再現しつつ、次第に透明な境地へと向かう。ブラームスが最後に書いた変奏曲の第3楽章ではクラリネット、ピアノが丁々発止と渡り合い、すべてやり遂げた人間の熱狂を賛美して終わる。 カップリングのシューマン2曲は壊れそうなほどに繊細な演奏だが、躍動感にも事欠かない。赤坂はドイツ留学の経験がなく、むしろフランスから帰国した後の日本でウィーン・アルティス弦楽四重奏団やゲーデ・トリオとの共演を通じ「ドイツ的な音楽の語法に磨きをかけてきました」と自負、パリとベルリンの2都市に留学した齊藤が繰り出す様々なアイデアにも柔軟に対応する。録音を終えた時、2人は「ブラームスからシューマンにかけての全曲が実は夜想曲、夜の音楽なのではないか」(赤坂)との思いを抱いたという。キャリアの終盤に差しかかった演奏家と、長い勉強時代を終えて完全にプロフェッショナルなキャリアを歩み出したばかりの演奏家の「全く初めての共演」(齊藤)が長期の録音プロジェクトを通じて実現し、絶妙な音楽の時間をディスクに刻印した。解説:池田卓夫(音楽ジャーナリスト@いけたく本舗(R))(2024/04/03 発売)

    レーベル名:ART_INFINI
    カタログ番号:MECO-1082