ヤンソンス, マリス(1943-2019)
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まるで映画音楽のように壮大で劇的な《アルプス交響曲》は、リヒャルト・シュトラウスの実体験に基づいて書かれた作品です。14歳、もしくは15歳のリヒャルト・シュトラウスが挑んだのはバイエルン州とチロル州の国境にあるドイツの最高峰ツークシュピッツェ(高さ2962m)。夏山の美しい自然と、荒々しい雷雨を体験した彼は登山の翌日にピアノでこの経験を再現したといいます。そして20年後の1902年に「アンチクリスト、アルプス交響曲」というタイトルでスケッチされ、一旦は4楽章の交響曲として構想されますが、結局は1911年、ガルミッシュの山荘で現在の形としての完成をみることになりました。登山の道行きは夜明けから始まり、崇高な日の出を見つつ山道を辿り、多くの自然と触れ合いながら道に迷いつつも、頂上を目指します。下山中に雷雨に遭遇、自然の脅威に畏怖するも、無事下山。登山者は無事に帰途に着くのです。ヤンソンスは冒頭からゆったりとした歩みで、各々の場面を情感豊かに描いていきます。もちろん後半のクライマックスも万全の仕上がり。ヤンソンスの細部へのこだわりと、迫力ある造形により、聴き手はまるで自分自身が登山を終えたかのような満足感を抱くでしょう。同時収録の《死と変容》は、20代の多感なシュトラウスの心情が反映された作品。ヤンソンスはオーケストラの持ち味を存分に生かし、うねる感情を丁寧に描き出しています。艶やかな弦楽器、パワフルな金管楽器、滑らかな木管楽器など各々のパートが渾然一体となった輝かしい響きは,バイエルン放送交響楽団の特徴とも言える独特な音色です。(2016/12/16 発売)
レーベル名 | :BR-Klassik |
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カタログ番号 | :900148 |
*初回限定特典:バイエルン放送特製パンフレット・・・輸入盤、国内仕様盤、どちらにも付属します。ヤンソンスとバイエルン放送響の全コンサート記録とBR-KLASSIKでのディスコグラフィを掲載(A5サイズ、英語のみ。全64ページ)。この録音を聴いていると、様々な想いが去来する。私の知るヤンソンスは、音楽の核心だけを見つめる真摯で虚飾のない音楽家だった。ニューヨークで当演奏会が行われた時、彼を愛するバイエルン放送響の団員たちは、これが最後の機会になることを心の奥底では感じていただろう。ブラームスの「第4」には、彼らの波打つ感情が表れており、聴き手としても、とても普通の気持ちではいられない。--城所孝吉(音楽評論、在ベルリン)2019年に世を去った名指揮者マリス・ヤンソンス(1943-2019)の最後の演奏会がCD化されます。首席指揮者を務めていたバイエルン放送交響楽団とのカーネギーホールでのコンサートです。ヤンソンスの健康状態がすぐれないことは現地の聴衆にも知られていたようですが、そのことがある種の緊張感をもたらしたのか、「ひとたび指揮台に立つと、驚くほど生気のみなぎった演奏を繰り広げ」、最後は「数十年にわたる音楽への献身に加え、その不屈の精神によってニューヨークの聴衆から敬意に満ちた心からの喝采を受けた」と伝えられます(Seen and Heard Internationalの演奏会評)。ヤンソンスは翌日以降の演奏会をすべてキャンセル、その3週間後には不帰の人となりました。プログラムは、彼が生涯愛したリヒャルト・シュトラウスの「歌劇《インテルメッツォ》からの4つの交響的間奏曲」と、「4つの最後の歌」(このアルバムには収録されておりません)が前半、後半はブラームスの「交響曲第4番」でした。いずれもたいへん美しい演奏ですが、とりわけブラームスが素晴らしく、終楽章でのたたみかけるような響きの交差のなかから立ち昇る、フルート・ソロの澄み切った音色、トロンボーンから始まるコラールの繊細さなど、オーケストラと巨匠との深い絆と信頼が成せる業と言えるでしょう。ヤンソンス辞世の句、そう思わせる特別な一夜の記録です。(2020/11/06 発売)
レーベル名 | :BR-Klassik |
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カタログ番号 | :900192 |
シュトラウス・イヤーに贈る2つのシュトラウス。シュトラウス(1864-1949)24歳の作である「ドン・ファン」はニコラウス・レーナウの詩に基づいた表現的な音楽。全てがわかりやすく、彼の交響詩の中でも人気の高い作品です。「英雄の生涯」に関しては、もう何の説明も必要ないものですが、一つだけブックレットに面白い記述がありました。確かにこの作品の最後は「隠遁と完成」であって「葬送行進曲」ではありません。シュトラウス自身の作品からの引用もたっぷりあり、自らを「英雄」に例えるとは何たる不遜な行為だ。と憤慨する向きもありますが、この壮大な自叙伝・・・それもまだまだ進化を続けるであろう英雄の姿は全ての聴き手を圧倒するものでもあります。ヤンソンスの「英雄の生涯」といえば、コンセルトヘボウとの初来日の際にもこの曲がプログラムに組まれていたほどに、彼の得意曲であり愛着のある作品であることは間違いありません。逆に言えば、なぜこれまでバイエルン放送響との録音が発売されなかったのかが不思議なほど。この演奏、実際は2011年のものであり、これまでCD化されなかったのは、やはり2014年の「シュトラウス・イヤー」を待ってのことだったに違いありません。全てがきちんとコントロールされた音楽と、厚みのある響き、そして納得の解釈。漲るパワーは、曲が終わりに近づいても途切れることはなく、ますます輝かしさと力強さを得て終結へと向かいます。崇高かつ神秘的な最後の和音が消えていくときに、人々は何を思うのでしょうか?(2014/11/26 発売)
レーベル名 | :BR-Klassik |
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カタログ番号 | :900127 |
シュトラウスの晩年の名作「メタモルフォーゼン」は、1945年、第二次世界大戦でドイツの敗戦決定間近に書かれた作品で、彼の思い出がたくさん詰まった劇場や、町並みが悉く空爆で破壊されてしまうのを目の当たりにした時に書かれた「ドイツへのレクイエム」とも呼べる悲痛な音楽です。しかしそんなシュトラウスの思いを他所に、イギリスでは「ヒトラーへのレイクエム」として捉えられていたのは彼にとっては心外だったに違いありません。同じ年の「オーボエ協奏曲」はピッツバーク交響楽団の首席オーボエ奏者ジョン・ド・ランシーの依頼で作曲されたもので、こちらは全てを超越したかのような、モーツァルトを思わせる美しい作品です。メタモルフォーゼンはヨッフムによる歴史的録音、オーボエ協奏曲は2006年の新しい録音。この50年でリヒャルト・シュトラウス演奏における様相も随分変化したようです。(2014/10/22 発売)
レーベル名 | :Oehms Classics |
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カタログ番号 | :OC1802 |
2014年4月から5月にかけて収録されたヤンソンスの指揮によるショスタコーヴィチの交響曲第5番。大成功を収めたミュンヘンでのこのコンサートの直後、ヤンソンスは同曲を携えアメリカ大陸ツアーに出発。ブエノスアイレスを皮切りに行われたコンサートは、各地で大絶賛されました。ショスタコーヴィチの交響曲第5番は、ヤンソンスにとって強い思い入れがある作品。彼が長く助手を務めたエフゲニー・ムラヴィンスキーの代役としてレニングラード・フィルの来日公演の指揮を担ったエピソードも知られています。「ショスタコーヴィチの音楽はますます世界中の人々を魅了し、聴き手の感情の最も深い部分にアピールしています。他には見られない実存する人間の感情と時代を超越した表現力は、心的外傷を伴う政治的な証人にもなります」とヤンソンスは語り、重ねて「ショスタコーヴィチは同時代の中で、最も誠実な作曲家の一人です」と称えるほど作曲家に対して共感を抱いていた彼らしい、熱い演奏が繰り広げられています。この演奏は、有名な1997年のウィーン・フィルハーモニーの演奏に比べると、全体的に、少しだけゆったりとしたテンポになっているのも興味深いところです。(2020/09/04 発売)
レーベル名 | :BR-Klassik |
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カタログ番号 | :900191 |
奇しくも同じ「ロ短調」という調性が付された2つの「第6番」の交響曲。書かれた年代は、ショスタコーヴィチが1939年、チャイコフスキーが1893年と、46年もの開きがあるものの、どちらの作品もメロディは深淵であり、至る所にため息が聴かれる闇を纏ったものです。ショスタコーヴィチの6番には、標題は付けられていないものの、第1楽章は重く暗く、また曲の終結部のチェレスタは神秘的かつ不気味なもの。かのバーンスタインも、この曲とチャイコフスキーの悲愴との共通点に目を付けていたことが知られています。当時の不安な世界情勢を反映した楽章ですが、第2楽章と第3楽章のからっとした明るさには、当時のショスタコーヴィチの皮肉な感情が込められていると言えるでしょう。かたや、チャイコフスキーの交響曲における副題「悲愴」は作曲家自身によるもので、曲自体の雰囲気が良く捉えられています。ヤンソンスの指揮は、この2つの曲の関連性を見事に引き出しつつ、どちらも決して重苦しさを引き摺ることなく、バイエルン放送響の実力を極限まで使って、極めて壮快に、かつ推進力ある音楽を引きだしています。どちらの作品も第1楽章が聴きもので、これまでなかったかのような「鮮やかな暗さ」を堪能できる名演です。(2014/05/28 発売)
レーベル名 | :BR-Klassik |
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カタログ番号 | :900123 |
ショスタコーヴィチの交響曲第7番は、1942年3月29日のプラウダ紙上で「私は自分の第七交響曲を我々のファシズムに対する戦いと我々の宿命的勝利、そして我が故郷レニングラードに捧げる」とショスタコーヴィチが宣言したことにより「レニングラード」と呼ばれています。人々を鼓舞するかのような力強い主題、金管の咆哮、悲痛なアダージョ、勝利を宣言するかのようなフィナーレなど楽章は起伏に富み、指揮者、オーケストラの見せ場も多い名曲中の名曲です。今回、リリースされるこのアルバムは、2016年2月11日と12日にミュンヘン、フィルハーモニー・イン・ガスタイクで録音されました。ヤンソンスの指揮は、この曲が書かれた“破滅的な時代”を鮮烈に描きだすと同時に、彼自身の深い共感も込めることで、作品に20世紀の最も重要な交響曲としての新たな命を吹き込んでいます。(2019/10/25 発売)
レーベル名 | :BR-Klassik |
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カタログ番号 | :900184 |
「交響曲第7番」(900184)に続くマリス・ヤンソンスとバイエルン放送交響楽団によるショスタコーヴィチの交響曲リリース、今作は2010年にライヴ収録された「交響曲第10番」です。1948年に完成された「交響曲第9番」での軽妙な作風が元で「ジダーノフ批判」を受けたショスタコーヴィチ、スターリンとの関係を慮ってか、交響曲第10番を発表したのはスターリンの没後である1953年、前作から8年を経過してのことでした。1953年に一気に書き上げたという説もあるものの、ショスタコーヴィチ自身を示す「DSCH音形」が多用されていたり、他の作品と同じ旋律が現れたりするため、やはり完成が棚上げされていたのではと考えられています。様々な解釈が可能な交響曲ですが、ヤンソンスは、ショスタコーヴィチを「真面目で誠実な作曲家の一人」とみなしており、この作品においても、実在する人間の感情と暗黒政治へのトラウマをストレートに表現しています。オーケストラの機動力をフルに用いたパワフルな演奏もヤンソンスならではの聴きどころです。(2019/11/29 発売)
レーベル名 | :BR-Klassik |
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カタログ番号 | :900185 |
2021年に発売された『マリス・ヤンソンス・エディション』(900200)からの分売。「ショスタコーヴィチの音楽に心を奪われ、心の一番奥深いところまで揺さぶられる人が世界中で増えている。ショスタコーヴィチの音楽は独特だ。それは政治がもたらした痛ましい時代の証言であると同時に、人間存在にかかわる根本的な感覚と経験が生み出す、時代を越えた表現となっている。私にとっては特に。」と語った名指揮者マリス・ヤンソンス。このアルバムには2011年と2012年に開催されたコンサートから、2曲のショスタコーヴィチ作品のライヴ録音が収録されています。ショスタコーヴィチの「ピアノ協奏曲第1番」は、正式には「ピアノとトランペット、弦楽合奏のための協奏曲」といい、トランペットにもソリストとしてのテクニックが要求される作品。ショスタコーヴィチは、歌劇《ムツェンスクのマクベス夫人》の完成からわずか数週間後の1933年夏にこの作品を書き上げており、26歳の若き作曲家の計り知れないほどの優れた才能が存分に感じられる逸品です。ピアノを卓越した技巧で知られるイェフィム・ブロンフマン、トランペットをNDRエルプ・フィル(旧名称ハンブルク北ドイツ放送交響楽団)の首席奏者を務め、現在もソリストとして活躍するベテラン、ハンネス・ロイビンが演奏、さまざまな風刺や引用なども含め、ヤンソンスの機敏な指揮が全体をまとめています。交響曲第9番は1945年11月3日にエフゲニー・ムラヴィンスキー指揮、レニングラード・フィルハーモニー交響楽団によって初演された「戦争三部作」の最後の作品。勝利の交響曲と期待されましたが、実際には風刺と皮肉に満ちており、この軽妙な作品はベートーヴェンの第九のような作品を求めていた政府関係者の意向に沿うことはありませんでした。ヤンソンスは機知と皮肉に満ちたこの作品をスタイリッシュに仕上げています。(2022/03/11 発売)
レーベル名 | :BR-Klassik |
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カタログ番号 | :900202 |