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伊藤順一

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    ツェルニー:12の前奏曲とフーガ Op. 400 (アトリエ・アッシュ・アートサロン コレクション第1弾)

    【世界初録音。カール・チェルニーの神秘を紐解く。今明かされる、その秀逸な書法と無限のアイデア。】カール・チェルニー「12の前奏曲とフーガ」作品400は、このサロンの共同主宰者である上田泰史氏の著書『「チェルニー30番」の秘密――練習曲は進化する』(春秋社 2017)の中から見つけた作品である。主に練習曲においてでしか知られていないチェルニーという作曲家であるが、この作品には、ピアノという楽器ならではの効果を駆使した秀逸な書法、音楽に深みを与える洗練されたハーモニー、明晰なコントラストと無限のアイデアが満ちている。19世紀の「前奏曲とフーガ」の白眉であることは明らかだ。チェルニーは、より多くの音楽家たちに注目して欲しい作曲家である。 (秦はるひ)■アトリエ・アッシュ・アートサロンとCD制作について 楽譜の向こう側の世界を知りたいという想いが年々募る。 作曲家の生きていた時代の息吹、住んでいた街の雰囲気、彼らの日々の生活や動向、交友関係から生じた芸術的な交流、等々。 作品について語る書物の行間で息をひそめる音楽や、音楽家たちが生きた時代の空気感を味わいたい、そして更に未知の作品を発掘してみたい――そのような想いから、上田泰史氏と共に、アトリエ・アッシュ・アートサロンを開いた。 年に2回、テーマを決め、気鋭の専門家の話を聞き、同時代の美術など音楽以外の芸術についても関心を拡げ、さらに時代の諸相を表す音楽作品をメンバーで試奏する、という充実した1日を過ごしている。そこでは、滅多に演奏されることはないものの、驚異と魅力溢れる作品を聴くことができる。サロンメンバーは、現在14人のピアニストで構成され、各人新しい知識、作品を知ることに意欲満々の仲間だ。 今回採り上げるチェルニーによる「12の前奏曲とフーガ」作品400は、このサロンの共同主宰者である上田泰史氏の著書『「チェルニー30番」の秘密――練習曲は進化する』(春秋社2017)の中から見つけた作品である。主に練習曲においてでしか知られていないチェルニーという作曲家であるが、この作品には、ピアノという楽器ならではの効果を駆使した秀逸な書法、音楽に深みを与える洗練されたハーモニー、明晰なコントラストと無限のアイデアが満ちている。19世紀の「前奏曲とフーガ」の白眉であることは明らかだ。チェルニーは、より多くの音楽家たちに注目して欲しい作曲家である。   アトリエ・アッシュ 主宰 秦はるひ(ピアニスト)■FAZIOLI ピアノについて 創業者であるPaolo Fazioli氏一代で、1978年より作られている。 当初、Fazioli氏はピアニストを目指していたが、家業の家具製造を手掛ける傍ら大学で音楽と工学を学ぶうち、現存のピアノに満足できなくなり、理想の楽器製作を自ら目指すに至った。ヴェネツィアの北Sacileの街に本社、工場、ホールを持つ。 生産はグランドピアノのみで、製作過程の全てが職人による手作りである。生産台数は現在、年間140台である。どの音域も均一で伸びのある響きでよく歌い、多声楽曲における各声部の音色の違いも明瞭に表す。現在でもなお、日々ピアニストたちの細かな要望に応えている。 2021年ショパン国際ピアノコンクールにおいて、1、3、5位のピアニストがFazioliピアノを使用するなど、近年、世界最高峰の楽器として益々評価が高まっている。今回、世界最大のピアノである F308をホールに運んで録音に臨んだ。   アトリエ・アッシュ 主宰 秦はるひ(ピアニスト)■関連楽譜『カール・チェルニー: 12の前奏曲とフーガ「フーガ演奏教本」作品400』 (春秋社)2022年11月末発売144ページ 菊倍版(タテ31cm、ヨコ23cm)定価 3、630円(本体3、300+税)ISBN 978-4-393-91239-3 C3373(2022/12/07 発売)

    レーベル名:ART_INFINI
    カタログ番号:MECO-1076

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    レスポワール(伊藤順一)

    【フランス三大音楽院であるパリ国立、リヨン国立、パリ・エコール・ノルマルで薫陶を受けた伊藤順一のフランス・エスプリを味わう。】フランス三大音楽院であるパリ国立、リヨン国立、パリ・エコール・ノルマルで研鑽を積み、シャトゥ(フランス)、ステファノ・マリッツァ(イタリア)、マウロ・パオロ・モノポリ(イタリア)、ニース(フランス)の各国際コンクールでグランプリに輝いた伊藤順一、待望のセカンド・アルバムです。まさに生粋のフランス仕込みならではの洗練された解釈や透明感溢れる音色は、伊藤の真骨頂です。他の追随を許さない真のエスプリをご堪能下さい。アルバム「レスポワール」に寄せて この度は、セカンド・アルバム「レスポワール」をリリース出来ましたことを嬉しく思うとともに、制作に携わって下さった方々に改めて感謝申し上げます。レスポワールとはフランス語で希望や期待という意味があり、それを曲から感じ取る、または見出したいと思い名付けました。 デビューアルバムの発売後から、セカンド・アルバムはフランス作品のみに焦点を当てると決めていて、今回はフランスを代表する作曲家のフォーレ、ドビュッシー、ラヴェルの作品と、当時音楽サロンで演奏されていた知られざるラヴィーナの作品も収録しました。私自身、計8年間のフランス留学で感じたフランス人の感性を少しでも表現出来るよう、想像を膨らませ、音色の多彩な変化に取り組みました。 フランスを代表する3人の作曲家は、同じフランス人でも雰囲気や音の性格が全く異なるので、その点を明確に表現したつもりです。また、ラヴィーナの作品は、当時サロンで演奏されていた気軽で馴染みやすいメロディーの曲なので、軽快さと物語を思い浮かべながら演奏してみました。 時に、希望を見失ってしまうかもしれない困難な時代ですが、決して本質を見失わず、期待を持って音楽とともに未来に向かって歩んでいきたいと思います。                                                            伊藤順一(2023年12月)伊藤順一、そのピアニズムの魅力――意思の充溢と音の造形術 演奏家の魅力はさまざまである。インパクトのある第一印象でぐっと人を惹き付けるピアニストもいれば、その魅力が聴くたびに少しずつ姿を現すピアニストもいる。 初めて聴く人にとって、伊藤の演奏の魅力を一度で捉えきることはおそらく難しい。しかしそれは、決して伊藤の演奏にインパクトが欠けているということではない。そのインパクトは、時間をかけて伊藤の演奏と向き合う人に、大地に雨がしみこむように、じっくりと浸透していくのだ。 こうした伊藤の演奏の魅力の鍵は、演奏の隅々にまで充溢した意思にある。全体の構成、フレージング、声部の聴かせ方、音色をつくる倍音、音の飛ばし方など、ピアノ表現のあらゆる面において、明確なビジョンがあるのだ。言い換えれば、きわめて情報量の多い演奏表現ということであり、一聴しただけではその魅力の片鱗に触れるだけで音楽は通り過ぎてしまう。しかし、二回目に聴くと、一回目に気づいたのとは別のところで新しい気づきがある。またしばらく日を置いて聴くと、再び新たな発見があり、これが際限なく続く。平たく言えば、「飽きが来ない」のだ。 なぜそのような演奏が可能なのだろう。演奏会のステージに立つとき、伊藤は会場のあちこちに自分の耳を置き、聴かせるべき旋律は真っ直ぐに飛ばし、伴奏声部は弧を描くように届くようなイメージを描くという。音がどのように聴き手に届くのかを判断し、瞬時にコントロールする技量は、表現のあらゆる側面に見出される。 演奏会場やピアノの条件はいつも同じとは限らず、演奏家はその都度新たな音づくりを迫られる。それを可能にするのは音と時間の造形的創造力とでもいうべきもので、異なるピアノ、異なる楽曲で演奏しながら、瞬時の判断で音響の像を作り上げていく。こうした音の造形術を、伊藤は持ち前の鋭い耳と感性によって身に着けてきた。楽譜に書かれることのない倍音に意識を凝らし和音を絶妙なバランスで響かせる耳と指は、師であるアンリ・バルダの演奏とも無関係ではないだろう。この繊細さが、ドビュッシーをはじめとするフランスのピアノ曲において得難い美点として表れていることは言うまでもない。 音の造形術に加え、伊藤の演奏の魅力はその雄弁な語り口にもある。音の物語として聴き手に語りかける伊藤の演奏の秘訣は、感情のパレットの多彩さにある。たとえば「喜び」という色の中には「主人公の喜び」や「他人が喜んでいるのを見る喜び」があり、「悲しみ」の中には「過去を思い出す悲しみ」や「現在の悲しみ」、あるいは「同情」がある。感情の質を見抜くばかりでなく、伊藤は感情の量にも思いを凝らす。たとえば f(強く)という楽譜上の指示は、もはや物理的な強度ではなく、感情の密度である。楽譜上の記号を越えて生きた感情を直覚する力は、子どもの心模様を描くアンリ・ラヴィーナ《初めての告白》でも存分に発揮されている。 このCDは、ライヴとは異なる録音用に整えられた環境で収録されたが、伊藤はライヴの音色を再現することに注力している。実際、客席で人間が聴くのとマイクが物理的に拾うのでは、音が相当に異なるため、随所でタッチを変えるなど工夫を凝らしている。そのおかげで、音色の理想の基本的な部分については、奏者が目指すビジョンを充分に味わうことができるだろう。この録音で伊藤順一の魅力に触れた方はぜひ、伊藤順一の演奏会に足を伸ばして、彼の音の造形の瞬間に立ち会っていただきたい。そのたびに、新たな魅力を発見することになるだろう。                                                                上田泰史(音楽学)(2024/01/24 発売)

    レーベル名:ART_INFINI
    カタログ番号:MECO-1081