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ART_INFINI: アルバム一覧

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    レーベル名:14
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    11月の夜想曲~新倉瞳 委嘱作品集(世界初演初録音)

    ファジル・サイ、藤倉大、挾間美帆、佐藤芳明、和田 薫の5人の気鋭の作曲家に新倉自身が作品を委嘱、全曲世界初演という記念碑的アルバムです。フルオーケストラによるサイの壮大な作品に始まり、塚越のマリンバ、佐藤のアコーディオン、そして林の大太鼓とチェロのデュオといったレコーディングの限界に挑んだともいえる、心震える渾身のアルバムです。(アールアンフィニ)ご挨拶今回のアルバムには、「11月の夜想曲 ~ 新倉瞳 委嘱作品集 (世界初演初録音)」というとても立派なタイトルがついているのですが、もっとシンプルに表現すると、私が強く感じた「好き」がギュッと詰まっているアルバムです。また、今回委嘱させて頂いた作曲家の皆さまと一緒に音を奏でてくださった演奏家の皆さまは、それぞれの世界で簡単には語り尽くせない素晴らしい音楽人生を歩んでおられます。ただ、そのようなバックグラウンドとは関係なく、シンプルに「好きです!尊敬しています!」という気持ちで私はお付き合いをさせて頂いております。時は遡り、2013年冬、スイスのチューリッヒのとある音楽カフェ・バー。クラシック音楽の世界で育った私ですが、友人に誘われたライブで偶然聴き、第六感で「好き!!」と初めて感じ、のめり込んだ音楽がクレズマー音楽(東欧のユダヤ音楽)でした。留学先のスイスでは、現代音楽・バロック音楽…とにかくあらゆる音楽の形態から影響を受けましたが、その中でも、クレズマー音楽から自然に学ぶことが大きく、気が付いたらクレズマーバンドのメンバーとしても活動するようになっていました。そんな直感的に感じた「好き」に一度出逢うと、それ以降は様々な場面で自分の気持ちに素直になれ「好きなモノ」に気付けるようになりました。そして、2016年のファジル・サイ氏との出逢いをきっかけに、サイ氏をはじめ、私が惚れ込んでいる藤倉大氏、挾間美帆氏、佐藤芳明氏、そして和田薫氏にも曲を書いて頂きたいと思い、5曲の我が子、このアルバムがオギャーと生まれることになったわけです。時を重ねるほどに「好き」の前向きな気持ちは自身の表情や行動に表れてきていると感じております。これからもその気持ちの向かう先に、自分とその周りの人々の笑顔があるのであれば、「好き」は悔いなく伝え、行動したいと思っています。人生一回きり、産まれてきてよかった、「あなた」と出逢えてよかった。と、このアルバムを聴いてくださる皆さまが、皆さまのそれぞれの「あなた」を思い浮かべ、笑顔になって頂けましたら幸いです!                                                                           新倉 瞳・ファジル・サイからのメッセージ夜想曲とは、夜に演奏され、夜に聴かれ、夜を表現する音楽である。まずはショパンの数々の作品が頭に浮かぶ。この《11月の夜想曲》は、特別で大切な日本の友人たちのため、彼らの東京と大阪における演奏会のために2019年秋に作曲された。11月のトルコ、イスタンブールの印象であり、秋の夜を想起させるものだ。霧が深く雨の降りしきるイスタンブールの暗い11月の夜道、まさに2019年の想い出である。新型コロナウイルスが世に現れる直前に作曲しているのだが、パンデミック、そしてそれがもたらした暗闇をこの作品は感知させる。日本を代表する指揮者の一人で敬愛する友であるマエストロ・イイモリ(飯森範親氏)は、私の作品を数多く日本およびヨーロッパで指揮している、音楽言語を極めてよく理解している音楽家だ。また、若い世代の中でも特に才能があり芸術性にあふれたチェリストのヒトミ(新倉瞳)が初演してくれた。私にとって大きな喜びであり、誇りに思う。《11月の夜想曲》初演および初録音はパンデミックのさなかに行われた。この見事な録音を通じ、この作品の独創性のみならず類まれな演奏をご堪能いただければ幸いだ。・藤倉 大からのメッセージ新倉瞳さんから連絡をもらったのはいつだったかな。かなり熱いメッセージを頂いたのだが、実際お会いするまでには何年かかかった。今回新作の依頼を受けた。ドレスのプロデュースなどをなさる瞳さん。お姫様的なイメージがある。ぱっと僕が思ったのは、実際誰も見ていない自宅で、そんな人が、ふてくされていたら面白いなと思った。どうやったら不良っぽい感じを醸し出せる作品が作れるか、チェロ的でないチェロの曲はどうやったらできるか、が今回の目標だった。半年以上かけて楽譜を書いては瞳さんに弾いてもらった自撮りの動画を送ってもらい、何度も書き直して作っていった。・挾間美帆からのメッセージ学生の頃から同世代アーティストで一目置く存在、それが私の「新倉瞳」との出会いだった。互いに留学を経て音楽活動をしていた数年前に再会し、すっかり意気投合。海外暮らしの苦楽話で盛り上がっていると、実は彼女が幼少期から多くの国で育ってきたことを知った。彼女のリクエストを加味しながらも、彼女の経験談を沢山聞いて同世代なりに消化したうえで、私なりに彼女の「瞳」を通した都市の姿が反映する音を紡いだ。・佐藤芳明からのメッセージ2つの楽器、2人の演奏者が刺激し合いながら高みを目指す、というのがイメージの出発点。『寛容』では人を受け入れる心の有り様を、『琢磨』では互いに切磋琢磨する姿を、《カノン》という形式に落とし込んでみた。共に取り組むバロック音楽の多声的なスタイルの他に、楽器を限定しなくとも音楽が成立する懐の深さに憧れ、チェロとアコーディオン以外の編成でも演奏可能。今後も色々な場面で演奏される曲になれば嬉しい限り。・和田 薫からのメッセージこの作品は、チェリスト新倉瞳さんからの委嘱で、和太鼓の林英哲さんとのデュオ曲として2020年夏より作曲に着手、11月に脱稿しました。全体は「序」「祷」「乱」「舞」の4部分で構成され、それぞれチェロの謡曲的主題に対して和太鼓が阿吽の呼吸で応えるよう企図しています。タイトルの「巫(かんなぎ)」の由来は、上の線を天、下の線を地とし、天から地への降臨を人ふたりで祝舞している様を表出しており、作品の構造自体を象徴しています。■新倉 瞳(チェロ) Hitomi Niikura、 Cello幼少期をアメリカとドイツで過ごし、8歳よりドイツでチェロを始める。桐朋学園女子高等学校音楽科を経て桐朋学園大学音楽学部を首席で卒業、卒業時には皇居桃華楽堂新人演奏会に出演、御前演奏を行う。その後、バーゼル音楽院ソリストコース・教職課程の両修士課程を最高点で修了。これまでにJan Vymyslicky、毛利伯郎、堤剛、Thomas Demenga、Martin Zeller (バロック・チェロ)の各氏に師事。室内楽を徳永二男、原田幸一郎の各氏に師事。2014年よりCamerata Zurichのソロ首席チェリストをつとめている。2003年いしかわミュージックアカデミーにてIMA音楽賞を受賞し、アメリカ/アスペン音楽祭に奨学生として参加。2007年第28回霧島国際音楽祭にて霧島国際音楽祭賞を受賞。2009年ルーマニア国際音楽コンクール室内楽部門にて第1位を受賞。2015年スイスのベルンで開催されたOrpheus Kammermusikwettbewerbにて入賞。同年、ポルトガルのリスボンで開催されたInternacional Verao Classico 2015チェロ部門にて第1位を受賞。2016年5月スイス/ルツェルンの高級時計ブランドCarl. F. BuchererよりPathos Woman Awardを受賞。2017年第18回ホテルオークラ音楽賞受賞。第19回(2020年度)齋藤秀雄メモリアル基金賞チェロ部門受賞。2006年8月桐朋学園大学在学中には、EMI Music Japan(現ユニバーサル・ミュージック)より「鳥の歌」をリリースし、紀尾井ホールにてデビュー。これまでにEMI Music Japanから3枚のアルバム、Live Notesよりピアニスト佐藤卓史とのライブCD「ブラームス&ラフマニノフ: チェロ・ソナタ」、F.S.L.レーベルよりアコーディオニスト佐藤芳明とのDuo「魂柱と鞴」、アールアンフィニ・レーベルより「ダンツァ」や、高橋多佳子、礒絵里子との「椿三重奏団」を含む4枚のアルバムが発売されている。また、チューリッヒを拠点とする人気クレズマーバンドCheibe Balaganのメンバーとして2014年から参加し、様々な音楽祭に招かれ、音楽の幅を広げている。現在はスイスを拠点に活躍する中、ソリスト、室内楽奏者として全国各地でリサイタル、オーケストラとの共演を重ね、司会、番組ナレーション、音楽劇、演奏家のためのドレスM Maglie le cassettoのプロデュース等、活動の幅を広げ音楽の素晴らしさを広く深く伝えようとする姿勢は多くの共感を集めている。使用楽器は、宗次コレクションより貸与されたGiovanni Battista Grancino(1694年製)。■アールアンフィニ(Art Infini)についてアールアンフィニ・レーベルは、株式会社ソニー・ミュージックダイレクトと、株式会社ミューズエンターテインメントとのパートナーシップによるクラシック専門レーベルです。世界的に活躍する才能溢れるアーティストのCDアルバムを定期的に制作、リリースしています。アールアンフィニはフランス語で「永遠の芸術」の意味。一貫してマーケットに迎合することなく、アーティストが表現したいことを純粋に追求しています。制作過程においては、全てのアルバムにおいてDSD方式でプロダクションされたマスターを使用、スイス・マージングテクノロジー社のDAWピラミクスにてDSD11.2MHz、またはDXDフォーマットでのレコーディングを行っています。マイクロフォンが捉えた信号を極力劣化させないようラインの最短化を図り、ステージ上のマイクロフォンの直近で収録されたアナログ信号をDSD、DXD信号に変換後、RAVENNA(AES67)で伝送しています。また動的リスクを回避するため記録媒体は厳選されたSSDを使用、さらにレコーディング?編集?マスタリングまで全ての電力は、高品位なリチウムイオンバッテリーで供給されます。アナログ、デジタル領域共に、まさに究極とも言える高品位化を実現しています。(2021/10/20 発売)

    レーベル名:ART_INFINI
    カタログ番号:MECO-1065

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    アランフェス(河野智美)

    河野智美の演奏は終始、誠に見事なものだった。オーケストラに対する音量の関係から PA を用いたが、これは不自然さを伴わぬよう周到に配慮された用い方で、マイナス面は皆無だった。そして彼女は、作品に湛えられた旋律美を決して表面的になぞるのではなく、心底からの共感を込めて表現し尽くしたのである。ギター奏者及び愛好家のサークルのみならず、あらゆる音楽ファンの胸に喜びと感動を伝え得る第1級のギタリスト/芸術家として私は河野智美を見ているが、このライブ盤こそ、その証左となるものに違いない。濱田滋郎河野智美のギターは、聴き手の想像力と創?力を喚起する。その演奏は作品が生まれた場所へといざない、作曲家の意図したところへと近づけてくれる。彼女が作り出す音楽は、非常にていねいで繊細かつ情感豊か。どんなに急galなテンポを要する箇所も、強音を必要とする部分もけっして弾き飛ばさず、自身が納得のいく音色と表現力で慈しむように奏でていく。ひとつひとつの弦の響きがこまやかな糸で織りあげられていくタペストリーにも似て、それまで要してきた時間と努力の積み重ねという空気をまとっている。だが、実際の音楽は、努力の痕跡は微塵も感じさせず、各々の音は幾重にも変容し、ひとつの絵巻物を描き出す。この録音は新たなスペイン作品との邂逅を意味するかもしれない。伊熊よし子このアルバムを皆様にお届けできることを、心から嬉しく思っています。ロドリーゴの2大コンチェルトをライブ録音する...思えばこの企画が決まった当初は、私にできるとも思えず、ただ漠然とした不安が募るばかりの日々でした。この偉大な2曲をコンサートで弾くだけでも、私には大きなことでしたが、それを録音し後世に残していくということは、これまでの経験からは想像を超えた大きな企画でした。それでも演奏のこと、PA のこと、レコーディングのこと、助言をしてくださる方、様々な連携を取って進めてくださる方、そして必要な資金をサポートしてくださる方々...前を向いてひたすら本番の日に向かっていた日々ですが、気がつくと周りでは様々な人が動き、助けられていました。これまでの幾つものコンサートも、もちろん同じ思いでしたが、より一層、皆で心をひとつにして臨むことができたコンサートとなりました。そして迎えた本番...指揮者とオーケストラとともに作っていく音楽には、言葉では表現できない充実した思いがありました。サントリーホールという最高の響きを体感できる場で、自分とオーケストラの音楽に全身全霊をかけて向き合い、集中できた時間だったと思います。この時にこの場で同じ時間を過ごしてくださった皆様に、改めて感謝申し上げます。このコンサートの後、瞬く間に新型コロナウイルスによる影響で、次々とコンサートが中止となりました。このコンサートが実現できたことが、奇跡的なことだったのかもしれないと思わされます。そしてこの充足感で満たされた経験は、不安感をも払拭してくれています。いつ終わるかわからない闇を恐れるよりも、今できることを少しずつ積み重ねて生きていく、その力をいただいたように思うのです。改めて録音された音楽を聴いていると、自分ではないような気迫が感じられ、またやはり自分であるという臨場感も思い出され、不思議な感覚になります。昨年までに行くことができたアランフェス宮殿をはじめとするスペインの地にも、祈るような気持ちで思いを馳せています。無事に再び訪れることができる日常が戻りますように・・・。ロドリーゴがこの作品に寄せた想いは、いま、このような世の中で、世界への想いへと重なり、また新たな気持ちへと繋がっていく...その流転が音楽の力のような気がしています。どうか皆様もお身体に気をつけてこの状況を乗り越え、また同じ空間で、同じ時を過ごせますように・・・お祈りしております。2020 年 8 月河野智美河野 智美(こうの ともみ)(ギター)Tomomi Kohno、 Guitar東京都出身。クラシカルギターコンクールで優勝のほか、東京国際ギターコンクール、アジア国際ギターコンクールなど、国内外のコンクールで入賞。2011 年、ギター製作家キム・ヒホン氏のプロデュースにより韓国にて DVD『Recollections』をリリース。韓国、中国でのリサイタルの他、ロシアのウラジオストク国際ギターフェスティバル、タイ国際ギターフェスティバルに招かれ、絶賛を博す。2012 年、イタリアのトリノ音楽祭で 3 回のリサイタルを行い、その時に見たイタリア各地での大聖堂に触発されたことは、アルバム『祈り Oracion』(2013 年「レコード芸術」特選盤)の選曲に大きな影響を与えている。2015 年、国際協力の一環として南米ボリビア・コチャバンバの音楽院を訪れ、技術指導や指導法のアドバイスを行う。そのときのコチャバンバ市民を招いたコンサートでは大きな成功を収めた。その後再びタイにも招かれてリサイタルを行い絶賛を博した。秋には「ジャズクラシック」をテーマに、現代のコンポーザー・ギタリストに焦点をあてたアルバム『リュクス』をリリース、音楽評論家の濱田滋郎氏より「ギター・アルバム中、最上級の成果」と評され、「レコード芸術」誌で特選盤の評価を得る。2016 年、オーストリアのルスト国際ギターフェスティバル、ロシアのモスクワとエカテリンブルクに招かれる。またスペインのマドリードでのリサイタルも 2 度に亘り成功させる。2017 年、初のオール・バッハ・アルバム『ザ・バッハ』(「レコード芸術」特選盤)をリリースし、東京・銀座の王子ホールでのリサイタルでは満場の観客で大成功を収めた。また、マドリードの歴史あるアテネオホールにて人間国宝鶴賀流第 11 代家元鶴賀若狭掾師匠とその一座、日本舞踊の花柳貴比氏、八王子車人形「西川古柳座」とのコラボレーション公演を行い、日西伝統芸能の共演は大きな反響を呼んだ。2018 年、サントリーホール・ブルーローズにて現代の楽器でのバロックアンサンブルのコンサートを行い、「ギター室内楽の新たな境地」と評判を呼んだ。秋にはベトナムのフェスティバル、2019 年にはスペインのガンディア国際ギターフェスティバルに招かれ絶賛を博した。また、スペイン最大とも言われるホセ・トマス国際ギターコンクールにてユース部門の審査も務め、更なる活躍の広がりを見せている。2019年、スペイン作品集『ザ・スペイン』をリリース、「レコード芸術」誌で特選盤の評価を得る。日本・スペインギター協会会長代理としてギター音楽の普及とギター界発展に寄与するべく、日々努めている。昭和音楽大学、並びに自身の主宰する音楽教室にて後進の指導育成にもあたっている。(2020 年 8 月現在)(2020/10/21 発売)

    レーベル名:ART_INFINI
    カタログ番号:MECO-1059

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    ギターは謳う(鈴木大介)

    名手・鈴木大介が、50歳の節目を迎えて満を持して放つ、全曲ニューレコーディングによる心震える究極のポピュラー名曲集。武満が鈴木のデビューのきっかけを作ったことはつとに有名だが、没後25年にあたる今年、名器イグナシオ・フレタ・エ・イーホスを用いて「ギターのための12の歌」の再録に臨んだ。その他、長くジャズ・ミュージシャンやシンガーに歌われ続けているスタンダード・ナンバーやシャンソン、生誕100周年を迎えたアルゼンチン・タンゴのアストル・ピアソラのナンバーなど珠玉の名曲全22曲が満載。物語のギタリスト 鈴木大介が50歳を迎えた節目に、武満徹がアレンジした〈ギターのための12の歌〉の3度目のフルレコーディングに臨んだ。武満が鈴木のデビューのきっかけを作ったこと、今年が没後25年にあたること、そして名器イグナシオ・フレタ・エ・イーホス1964(以下フレタ)という素晴らしいギターを入手したことが重なって、再録の気持ちに駆られたのだそうだ。4曲のみ収めたカセット・テープを武満が聴いた1995年のレコーディング同様、今回も鈴木によるアドリブが加えられている。 それだけではない。長くジャズ・ミュージシャンやシンガーに歌われ続けているスタンダード・ナンバーやシャンソン、また生誕100周年を迎えたアルゼンチン・タンゴのアストル・ピアソラが残した名曲も収録された。ジャズのレコーディングのようにオーヴァーダヴィングなし、ほとんどがファースト?サード・テイクで完了されたため、音楽的にスムーズだ。加えて、レコーディング・スペックがDSD11.2MHzという、最高峰のハイフィディリティで録音されたから、目の前で鈴木がギターを弾いているような臨場感がある。 そして、アルバムには『ギターは謳う?MyGuitar’sStory』というタイトルがつけられた。中川ヨウ/YoNakagawaMyGuitar’sStory序 2020年は武満徹さんの生誕90周年でした。そして今年2021年は武満徹さん没後25年になります。 この間、武満さんが編曲した『12の歌』を数度にわたってコンサートと放送のために演奏、録音する機会を得ましたが、時を同じくして世界は新型コロナウイルスによる未曾有のパンデミックを経験させられています。 コンサートはネット配信や人数制限のもとに行われるようになり、音楽の受容には、僕の周囲でも様々な変化が起きました。僕はギタリストですので、たった一人で誰もいないコンサートホールからライヴ演奏を配信することもありました。もしかするとインターネットの向こうで、一人で聴いていてくださった方もいらしたはずですし、弾きながら、1対1という感触を持ったこともほんとうです。そのような体験を経て、制限された人数のお客様たちとホールで対峙すると、まるで自分とお客様のおひとりおひとりが無数に張り巡らされた糸でつながっているような感覚になりました。音楽は何人で演奏していても、何人で聴いていてもらっても、かならずひとりひとりの心に帰るものであるということをあらためて認識したのです。 ギターで“謳う”のは、声にならない詞(ことば)に思いをこめるということです。いつおさまるとも知れぬ不安のなかで、“歌”を奏でることにのせる気持ちはますますふくらんでゆきました。第二次世界大戦に疲弊した日本で音楽を志し、世界的に愛される作曲家となられた武満さんが、高度成長期の激動の後にようやく安定した生活を取り戻したかのようだったであろう1977年に、“ひとつの地球が歌うことへの讃美”として編まれた曲集を、僕はコロナによって誰もが等しく危機に直面している地球で弾いている、そのことを思った時、まさに自分にとってもう一度この作品集を録音する機会がやってきているのだと気づきました。 今回は、僕にとって3回目の全曲録音になります。最初の録音では収録時間の都合で繰り返しを省略せざるをえなかったため、その4年後という早い時期に再録音したので、およそ20年ぶりの録音になります。 『12の歌』に添えて、ローラン・ディアンスの名アレンジや、自分の編曲でさらにいくつかの美しい“歌”を収録したい気持ちが最初にありました。この20年間、編曲や作曲に多くの機会をいただけたことは得難い経験となり、わずかではありますが自信ともなりました。そして今回は自編の選曲やアレンジについて、中川ヨウさんからたくさんの貴重なアドヴァイスと励ましをいただけたことに心から感謝しています。また、前作『シューベルトを讃えて』からディレクションしてくださっているアールアンフィニ・レーベルの武藤敏樹さんにも録音とテイク選びにご助言いただきました。お世話になったたくさんの皆さん、音楽を助けてくれている多くの素敵な皆さんに囲まれて、僕の側にずっといてくれた歌たちをこのようなアンソロジーにできたことをとても嬉しく思います。鈴木大介■鈴木大介(ギター)DaisukeSuzuki、Guitar作曲家の武満徹から「今までに聴いたことがないようなギタリスト」と評されて以後、アンサンブルとコンチェルトを含む膨大なレパートリーでの、明晰な解釈力と洗練された技術によって常に注目を集める。マリア・カナルス国際コンクール第3位、アレッサンドリア市国際ギター・コンクール優勝。近年はジャズやタンゴのアーティストたちとの演奏活動や、自作品によるライヴ演奏も行い、また多くのアレンジは録音やコンサート共に好評で、様々なギタリストに提供され演奏されている。また、美術作品からインスパイアされたプログラムにも積極的で、これまでに国立新美術館「オルセー展」、ブリヂストン美術館「ドビュッシー展」、東京都現代美術館「田中一光展」を始めとする多くの美術展でのコンサートを成功させている。楽譜は現代ギターから『12のエチュード』『キネマ楽園ギター名曲集』『DaisukeSuzukiTheBestCollectionforGuitarsolo』を発売。2021年2月20日には、武満徹没後25年を記念して、『武満徹映画とテレビ・ドラマのための音楽鈴木大介によるギター編曲作品集』が日本ショットより出版された。これまでに30作以上ものCDを発表し、いずれも高い評価を得ている。第10回出光賞、第56回芸術選奨新人賞を受賞。(2021年8月現在)■アールアンフィニ(ArtInfini)についてアールアンフィニ・レーベルは、株式会社ソニー・ミュージックダイレクトと、株式会社ミューズエンターテインメントとのパートナーシップによるクラシック専門レーベルです。世界的に活躍する才能溢れるアーティストのCDアルバムを定期的に制作、リリースしています。アールアンフィニはフランス語で「永遠の芸術」の意味。一貫してマーケットに迎合することなく、アーティストが表現したいことを純粋に追求しています。制作過程においては、全てのアルバムにおいてDSD方式でプロダクションされたマスターを使用、スイス・マージングテクノロジー社のDAWピラミクスにてDSD11.2MHz、またはDXDフォーマットでのレコーディングを行っています。マイクロフォンが捉えた信号を極力劣化させないようラインの最短化を図り、ステージ上のマイクロフォンの直近で収録されたアナログ信号をDSD、DXD信号に変換後、RAVENNA(AES67)で伝送しています。また動的リスクを回避するため記録媒体は厳選されたSSDを使用、さらにレコーディング?編集?マスタリングまで全ての電力は、高品位なリチウムイオンバッテリーで供給されます。アナログ、デジタル領域共に、まさに究極とも言える高品位化を実現しています。(2021/09/22 発売)

    レーベル名:ART_INFINI
    カタログ番号:MECO-1064

  • グラシア(デュオ・パッシオーネ)

    【4弦+6弦=10弦が奏でる、パッションとカンタービレの音の万華鏡】10年以上共演を重ねてきた礒絵里子(ヴァイオリン)と河野智美(ギター)がユニットを組み、この度デュオ・パッシオーネとしてデビューしました。弓で奏でるヴァイオリン(4弦)と、指で爪弾くギター(6弦)の合計10弦で紡ぐ千変万化の音のタペストリーは、まさにデュオ・パッシオーネの真骨頂。ブエノスアイレス組曲や、7つのスペイン民謡、ルーマニア民俗舞曲、デュオ・パッシオーネのために編曲されたエル・ビート、2021年に生誕100年を迎えたピアソラ作品まで、スペイン・南米音楽を中心に魅惑の全23トラックを収録。煌めく二筋の光 このアルバムを聴かれた方は、ヴァイオリンとギターという組み合わせが実は作曲者にとっても、また演奏者にとっても決して簡単なものではないということを、おそらく誰もが信じられないだろうと思います。それは演奏者である、礒絵里子さんと河野智美さんが巧みにレパートリーを選び、入念に音楽を読み解き、そして目がさめるような演奏技巧で、表現しているからなのだと申し上げておきましょう。 私が河野さんの演奏を聴いたのは、もうずいぶん前なのに、その清廉な音楽と嫉妬すら覚える鮮やかな演奏技巧は、同じギタリストである私の耳に、まるで昨日の出来事のように鮮烈に残っています。その河野さんから、ヴァイオリンとの二重奏の編曲を依頼された時には、編曲者としてよりも演奏者として、果たして彼女がどのように演奏で応えてくれるのだろうかという強い興味を持って、快諾したのでした。言わばそれは「挑戦」のようなもので、「さあ、貴女はこのフレーズをどのように弾くのだろうか?」と、好奇と興奮に包まれながら音符を書き連ねていったのでした。礒絵里子さんの演奏に接したのは、その後お二人の演奏を動画でお送り頂いた時が初めてでしたが、編曲作業を進めながら河野さんから送られてくるメールには、共演者への全幅の信頼と敬意を強く感じ、そして結果として私が耳にしたお二人の演奏は、それが真実であることをまさしく証明していました。 このアルバムに聴く作品の数々は、ピアソラやヴィラ=ロボスによる南米音楽、そしてファリャやインファンテによるスペインの音楽、そしてハンガリーの作曲家、B.バルトークによる民俗舞曲です。いずれも彼らの肉体と言っても良い音楽、血が飛沫となって花を咲かせたような音楽ばかりです。ともすれば土臭さや、通俗性に陥りかねないこれらの音楽に、高潔な佇まいを持って、気品を感じさせる演奏は、二人の奏者が音楽と一体となって、作品に寄り添っている証だろうと思います。もちろん鮮やかな演奏技巧もそこには貢献しているのですが。 このアルバムを聴き進むにつれて、アマゾンの鬱蒼たる密林の中に差し込む光、ファリャが命を捧げた祖国の音楽への愛情、などなど、まるで二人の演奏家がそこに「煌めく二筋の光」となって、照らし出し、私たちに送り届けてくれているように感じます。二つの異なる楽器の音を虚飾なく、生々しく伝える優れた録音も特筆に値します。そして、このアルバムに編曲者の一人として参加できたことを、心より嬉しく思います。                                                            藤井眞吾(ギタリスト/作曲家)デュオ・パッシオーネについて人気、実力ともに兼ね備え、今や円熟の域に達しているヴァイオリン礒 絵里子と、この10年の活躍が目覚ましく、アルバムを出すたびに高い評価を得ているギター河野智美によるデュオ。たびたび共演を重ねてきた二人であるが、2020年9月、鎌倉芸術館でのコンサート「音楽のチカラ」での大成功がきっかけとなり、満を持して結成された。弓で奏でる四弦のヴァイオリンと指で爪弾く六弦のギター、合計十弦で紡ぐ音色で追求するのは、はかなさと情熱が同居する音楽。二人の確かなテクニックとパッション溢れる音楽性により、心の深淵に触れる優艶な世界を描いていく。礒 絵里子(ヴァイオリン) Eriko Iso、 Violin 桐朋学園大学卒業後、その才能を高く評価した I.オイストラフ氏に招かれ、文化庁芸術家在外派遣研修員としてブリュッセル王立音楽院に留学。修士課程大賞を受賞し首席修了。マリア・カナルス国際コンクール等国内外のコンクールで入賞。デビュー以降、世界各地でリサイタルを行い、ソリストとしても日本フィル、東京フィル、神奈川フィル、名古屋フィル、九州交響楽団、プラハ室内管弦楽団、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、ヴェネツィア室内合奏団、オルフェウス室内管弦楽団(NY)、フレミッシュ放送交響楽団(ベルギー)等国内外主要オーケストラと共演し、「知性と感性と技術の実力派」と高い評価を得る。宮崎国際音楽祭に毎年参加し、また2002年よりアウトリーチ(学校訪問)コンサートに取り組み、現在(一財)地域創造公共ホール音楽活性化支援事業登録アーティスト。「題名のない音楽会」「アインシュタインの眼」「クラシック倶楽部」などのテレビ・ラジオ出演も多く、2010年より FM ヨコハマ「礒絵里子の SEASIDE CLASSIC」でパーソナリティを務めている。2005年愛知万博で草刈民代氏と「バレエと音楽の夕べ」で共演し、連日一万人の観客を魅了した。2007年デビュー10周年を記念してリサイタル・シリーズを開始、第1回「ベルギーコレクション」は NHK-BS「クラシック倶楽部」にて放送された。デビュー15周年、20周年を記念したリサイタルも好評を博した。 現在、ソロ活動に加え従妹神谷未穂との「デュオ・プリマ」、宮谷理香(ピアノ)、水谷川優子(チェロ)との「Ensembleφ(ファイ)」、高橋多佳子(ピアノ)、新倉瞳(チェロ)との「椿三重奏団」など室内楽でも多彩に活躍中。真摯な演奏への取り組み、確かな技量に基づいたヨーロッパ仕込みの洗練された感性には定評があり、「気負いのないしなやかな活動ぶりがクラシック音楽シーンで着実に存在感を放っている」など各媒体で高く評価されている。現在10枚のCDが好評発売中。2020年2月に発売された椿三重奏団「メンデルスゾーン&ブラームス: ピアノ三重奏曲第1番」は「レコード芸術」誌特選盤に選出された。洗足学園音楽大学講師として後進の指導にもあたっている。河野智美(ギター) Tomomi Kohno、 Guitar クラシカルギターコンクールで優勝の他、東京国際ギターコンクール、アジア国際ギターコンクールなど、国内外のコンクールで入賞。 CDはアールアンフィニより『祈り』(2013年)、ジャズクラシック作品集『リュクス』(2015年)、オール・バッハアルバム『The BACH』(2017年)、スペイン作品集『The Spain』(2019 年)をリリース、いずれもレコード芸術誌で特選盤の評価を得る。中でも現代のコンポーザー・ギタリストに焦点をあてたアルバム『リュクス』は、音楽評論家の濱田滋郎氏より「ギター・アルバム中、最上級の成果」と評された。2020年、サントリーホールにて東京フィルハーモニー交響楽団、梅田俊明氏指揮のもと「アランフェス協奏曲」「ある貴紳のための幻想曲」の2大ギターコンチェルトを演奏、秋にライヴ盤アルバムとしてリリースされ、朝日新聞にて推薦盤として紹介された。2大ギターコンチェルトのライヴ録音リリースは、世界初の試みとも言われている。これまでにロシア、韓国、中国、イタリア、ボリビア、オーストリア、ロシア、スペイン、タイ、ベトナム等各国に招かれコンサートやマスタークラスを行っている。なかでもマドリードの歴史あるアテネオホールにて人間国宝鶴賀流第11代家元鶴賀若狭掾師匠とその一座、日本舞踊の花柳貴比氏、八王子車人形「西川古柳座」とのコラボレーション公演を行い、日西伝統芸能の共演は大きな反響を呼んだ。また、スペイン最大とも言われるホセ・トマス国際ギターコンクールにてユース部門の審査も務めている。他楽器とのアンサンブル活動も活発で、2018年サントリーホール・ブルーローズにて行われたバロックアンサンブルのコンサートでは、「ギター室内楽の新たな境地」と評判を呼んだ。ソプラノの奥脇泉とのユニットでは古楽から民謡、ポップスまでジャンルに囚われず独自のレパートリーを切り開き、「心地よい音楽」を追究している。「音の響きに情感と温かみがあり心に入ってくる」「聴く人の心に寄り添う音楽」と定評がある。 日本・スペインギター協会会長代理としてギター音楽の普及とギター界発展に寄与するべく、日々努めている。昭和音楽大学、並びに自身の主宰する音楽教室にて後進の指導育成にもあたっている。                                                             (2021年12月現在)(2022/01/19 発売)

    レーベル名:ART_INFINI
    カタログ番号:MECO-1069

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    ザ・ヴィルトゥオーゾ(八木大輔/秋川風雅)

    慶應義塾高等学校在学中のピアニスト(2022年1月現在)、八木大輔と秋川風雅のジョイント企画CDです。数々の国際コンクールを怒涛の勢いで制覇しつつある二人の若き才能の「今」を刻印したデビュー・アルバムは、ショパン・エチュード、ベートーヴェン・ソナタ、リストと王道のレパートリーでその真価を世に問います。二人の連弾によるラフマニノフのイタリアン・ポルカ他聴きどころ満載のアルバムをお楽しみ下さい。八木 大輔(ピアノ) Daisuke Yagi、 Piano慶應義塾高等学校 3年在学中2003年神奈川県生まれ。4歳より藤井麻衣子、6歳より石井理恵の両氏に手ほどきを受け、現在黒田亜樹、藤井一興の各氏に師事。またタチアナ・ゼリクマン、ドミトリー・バシキーロフ、ヴィンツェンツォ・バルツァーニの各氏にも指導を受ける。2017年5月、第7回ピアノタレント国際コンクールにて大賞および聴衆賞受賞。同年10月第30回ポッツォーリ国際ピアノコンクールにおいて第3位、13歳で史上最年少入賞を果たす。2018年3月第4回スタインウェイ・コンクールin Japanにて大賞および聴衆賞受賞。同年5月チッタ・ディ・カントゥ国際ピアノ協奏曲コンクール古典派部門で第1位(最年少受賞)、併せてベートーヴェン賞受賞。2019年6月、アンドレア・バルディ国際ピアノコンクールにて史上最年少で第1 位受賞。同年11月スポレート国際ピアノコンクールにて史上最年少で第1位受賞。2021年9月MozArte国際ピアノコンクール(アーヘン)最高位(1位無し第2位)入賞。シャネル・ピグマリオン・デイズ2020/2021参加アーティスト。(2022年1月現在)秋川 風雅(ピアノ) Fuga Akikawa、 Piano慶應義塾高等学校 2年在学中2004年東京都生まれ。父はオペラ歌手、母はピアノ講師、祖父は声楽家という恵まれた音楽環境の中、ピアノを始める。3歳より毎年、Hakuju Hallにてソロリサイタルを開催。6歳 日本フィルハーモニー管弦楽団と共演。モーツアルト「ピアノとオーケストラのためのコンサートロンド」を演奏。12歳 東京交響楽団と共演。ショパン「ピアノ協奏曲第1番」を演奏。また同演奏会にて、ベートーヴェン「交響曲第7番」を指揮。13歳 ニッポンシンフォニーと東京芸術劇場にて共演。ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」を演奏。翌年チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」を演奏。国際コンクール「チャンピオンズ・キーボード」(イタリア)ベートーヴェン部門第1位。ホロヴィッツ・コンクール(ハンガリー)フェリックス・ブルーメンフェルト記念賞[大会最高位賞]。ピアノを両親に学び、また小島さやか氏、そして数々の著名なピアニストの指導を受ける。声楽を父に、指揮法を鈴木織衛氏に、作曲法を古川琴子氏に学ぶ。(2022年1月現在)音楽家とは、総合的な人間活動の中の、一つの表れである。 必ずしも専門化されたある種の特殊な職業だけを指して言うのではない。 音楽史を振り返ってみても、科学者・医者・弁護士・政治家・外交官・作家といった人々が、同時に優れた音楽家でもあったケースは数多い。音楽家として生きることが、他の職業から切り離され、プロとアマとの間に大きな溝が作られていったのは、近代以降の現象に過ぎない。 最近は総合大学や理系の大学で「リベラルアーツ」というスローガンが掲げられるようになってきた。リベラルアーツという言葉はギリシャ・ローマ時代の「自由7科」(文法、修辞、弁証、算術、幾何、天文、音楽)に起源を持っているが、自由人として生きるための普遍的学問のひとつとして、いま音楽は再び見直されつつある。 そもそも、音楽家は必ずしも音楽大学を出た人だけがなるものとは限らない。 このたび慶應義塾高等学校に在学中の八木大輔さん(3年)、秋川風雅さん(2年)がピアニストとしてデビューされたが、このことはとても象徴的な出来事に思える。 細やかな技巧派タイプの八木さんは、この春から同大学の文学部美学美術史専攻に進学する予定で、英語以外の多国語を習得することに意欲を見せている。オペラにも大変詳しい。筆者は彼のメシアンの演奏を聴いたことがあるが、そのときの印象が強かったので、今後は現代的なレパートリーも加えていって欲しい。 覇気とエネルギーにあふれるタイプの秋川さんは、同大学の法学部への進学を希望している。両親が音楽家で、3歳から毎年ソロ・リサイタルを開催し、6歳にしてオーケストラと協奏曲を共演しているという彼に、法律を学びたい理由は何かと聞くと、「興味のあることを学びたいから」という頼もしい答えが返ってきた。 音楽とはこの世のすべてを反映するものである。幼少時からピアノに秀でた才能を示しながらも、広く学び続けようとする二人のポテンシャルをぜひ聴きとってみたい。             2022年1月 林田直樹“Little Leo”と〈見者(けんじゃ)〉の眼 ―「風の時代」のピアニストたち―  山田 良 八木大輔、秋川風雅、それぞれが奏でるピアノに初めて直接触れたのは、2022年1月、新年の清新な空気が残る、東京・青山のスタインウェイ・ショールームだった。両名、演奏・佇まい共に、互いに異なる個性の持ち主。が、来きたる時代の演奏家の姿を予感させる、というところでは見事に一致するものがある。 人生の始まりから良くも悪くも「ピアノ一色」というのが、従来の「ピアニスト」の一つの典型イメージだったとすれば、それとは真逆の生き方を、既に彼らは体現している。彼らにとって、ピアノはあくまで自分の世界を形成する一要素であり、それは彼らが日々体験する、ピアノ以外の多くのこと――音楽以外の分野での学びや、人としての喜怒哀楽、人生の様々な諸相――と響き合う中で磨かれ、芸術表現としての精彩を増していくものなのだろう。 もっとも、そうしたスタイルは、これまでの演奏家の多くが辿った道とは全く別のルートを行くがゆえに、その前途は決して平坦ではないだろう。彼らは道なき道を自ら開拓せねばならぬパイオニアであり、その道程は、それぞれが「背負うもの」を、己を輝かせる糧にまで昇華させる魂の旅路ともなるだろう。そして、2022年1月5日に青山で聴いた二人のピアノは、それぞれの旅路の色合いを既に予感させるものでもあった。 秋川風雅。勢いのある、若々しい魅力を湛えたショパンのエチュードの後に、「熱情」ソナタ第1楽章。最も印象的だったのは、彼の「心の現い在ま」を、想いひとつ、それだけでピアノに響かせているような、潔いまでの直情的な演奏だ。音楽家を輩出してきた家系の生まれと聞いて、はからずも great heritage は great pressure にもなり得る、ということを思う。波打つゆたかな髪を揺らしながら、白皙はくせきの頬を紅潮させて鍵盤に向かう彼の横顔に、ふと“Little Leo”(小さき獅子)という言葉がほの見えた。幼き獅子の成長物語、といえば、手塚治虫の『ジャングル大帝』や、ディズニー・ミュージカルの『ライオン・キング』が想起されるが、レオもシンバも、自らの力で「父」を、「祖先」を超えて初めて真正の「王」となる。秋川風雅の「心ひとつ、想いひとつ」を忌憚なく響かせる、直なおいその姿勢に精神のさらなる強靭さと人生経験の裏打ちが加わった時、彼のピアノは力強い若獅子のそれに変わるのではないか、という予感がする。そして、その先にあるはずの、獅子王の風格を備えた完成形を、聴衆の一人として、いつか聴き届けたい、と思う。 八木大輔。長身を揺らしつつ、すたすたとステージへ。飄々とした佇まいで客席を一瞥、ひょいと身を折り曲げるようにして、するり、とピアノの前に座る。この一連の所作を見ながら、突飛に聞こえるかもしれないが、才ある噺家はなしかのそれと同じオーラを感じた(実際、この時彼が弾いた「ドン・ジョヴァンニの回想」には、落語の大ネタの好演と同質の、一つの舞台世界としての「統一感」と「存在感の厚み」があった)。これから単身で舞台に「世界」を創り上げることができる人間特有の、「気迫」のようなものである。「それ」が生じるには、技術と感性と知性だけでは足らず、一種の「狂気」が必要だ。それは此岸にありながら彼岸を見通す視線、詩人ランボーが謳うたった「見者(けんじゃ)-le voyant(ル・ヴォワイヤント)」の眼、真のアーティストだけが持つ、善悪を超えて世界の本質を視みる眼差まなざし、透徹の千里眼に湛えられるエネルギーでもある。八木大輔の演奏姿を見た時に、最も印象的だったのは、ピアノの内部を掬うようにして、楽器の向こう側までも見通すかのような、不思議な視線の高さであった。会心の演奏の際にはほとんど動かない、と本人談の、独特のその眼差しには、時に見えない音に追い縋るかのような狂おしさ、時に音の行方を愛おしむかのような優しさ、そして時に音をその視線で自在にコントロールしようとするかのような不敵さをも含んで、「ああ、このピアニストには本物の〈狂気〉の気配がたしかにある」と感じさせるものがあった。この先、この「視線」が己の内外をどこまで見通し見据えることができるか、それは現時点では未知数である。しかし、演奏後のインタビューでの彼の語り口を、その演奏の記憶と共に思い出す時、彼ならきっと、己おのが「見者」の眼が捉えた光景を、自身の音楽に十分還元、反映させ得るであろうと感じる。 西洋占星術によれば、今は、「土の時代」から「風の時代」へと移り変わる時期なのだそうだ。過去200年にわたる土の時代が金銭や物質、権威といった現世のソリッドな要素を重視したのに対し、来る風の時代では知性やコミュニケーション、個人といった、自由と個性を象徴する要素が台頭するらしい。その意味では、“D&F”はまさに風の時代の申し子ともいえるかもしれない。奇しくも、現代ピアノの原型である「フォルテピアノ」が生まれたのが19世紀に入ろうとする頃、土の時代の始まりの時。風の時代のピアニストたちが、土の時代に生まれた西欧音楽最大の楽器を、いかに軽やかにバージョンアップさせていくのか。同時代に生き合わせた者としての幸運を喜びつつ、見届けていきたいと思う。 (2022年1月)(2022/02/23 発売)

    レーベル名:ART_INFINI
    カタログ番号:MECO-1070

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    ザ・スペイン(河野智美)

    (2019/02/13 発売)

    レーベル名:ART_INFINI
    カタログ番号:MECO-1053

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    ザ・リサイタル(久末航)

    【数々の国際コンクールを制覇してきたヨーロッパ本流のピアニズムが、今ここに開花する。】第66回ミュンヘン国際音楽コンクール第3位&委嘱作品特別賞、第7回リヨン国際ピアノコンクール優勝&聴衆賞、2016年度メンデルスゾーン全ドイツ音楽大学コンクール優勝他数々の国際コンクールを制覇してきたドイツ在住の若き俊英Wataru Hisasueのデビュー・アルバムです。アーティスト自身が長年にわたり研究を重ね磨き上げてきた数多あるレパートリーの中から厳選に厳選を重ね、一夜のリサイタルのようにアルバム全体の起承転結をも俯瞰した全13トラックを収録しました。まさにWataru-Ism!を心ゆくまでご堪能下さい。デビュー・アルバムに寄せてこの度、私のデビュー・アルバムとなるCD「ザ・リサイタル」がアールアンフィニ・レーベルよりリリースされる運びとなり、心より嬉しく光栄に思います。「ザ・リサイタル」というタイトルを付けたのは、音楽を通じて感情や思いをありのままに吐露できる舞台のうえでの演奏こそが、最も自分を正直かつ直接的に表現できる手段ではないかと感じたからです。今回のデビュー・アルバムでは、そうしたリサイタルでの臨場感をそのままに、できるだけ生演奏に近いクオリティをお届けしたいという切実な思いをもってレコーディングに臨みました。素晴らしい音響空間のホールと最上のコンディションの楽器、そして音への追求に一切の妥協を排してレコーディングに臨んだプロデューサーや調律師の方々の厚いサポートに恵まれ、ここに会心のCDを完成させることができました。収録曲はリサイタル・プログラムを意識したラインナップとなっています。ピアノ音楽が生み出す彩り豊かな世界を楽しんでいただきたいという思いから、スカルラッティからメシアンに至るまで、様々な時代・国の作曲家の作品をプログラムに入れました。中でも、若きメンデルスゾーンの書き上げた、流麗の中に情熱を秘める「幻想曲 作品28」、そして精緻を極めてベルトランの詩の世界観を表現したラヴェルの傑作「夜のガスパール」は、今回のリサイタルにおいてとりわけ聴きごたえのある作品となっているでしょう。続くメンデルスゾーンの無言歌2曲は、アンコールのように聴いていただけたらという思いから、CDの一番最後に位置付けました。是非このCDを通して、実際に会場で耳にしているかのような臨場感溢れるピアノの音色、また音楽そのものを包み込んでいる静寂や緊張感まで含めて楽しんでいただければと思います。そして、皆さまと共に豊かな時間を共有することができれば本望です。2021年秋 久末 航幼少の頃から才能を認められ、14歳でリサイタルを開くなど、「栴檀は双葉より芳し」をまさに地でいっていた久末航。しかし、理系学問への関心もあり日本の音楽大学へと進学せず、高校卒業とともに海外へ渡ったために、国内での知名度がエスカレーター式にあがることはなかった。彼が再びその名を轟かせたのは、日本人として河村尚子以来11年振りに上位入賞を果たした2017年のミュンヘンARD国際音楽コンクールだろう。順位こそ第3位ではあったが、現場で聴いていた筆者は、折り目正しく、共演のオケのメンバーとも音による対話を親密に交わし、その場を楽しみつつ爽やかに歌った久末の方が、あまりに力任せの演奏だった第1位受賞者よりもずっと好印象だったのを今でも鮮明に覚えている。久末の演奏の魅力は、端的に言えば、明晰さ、知的な構成力、そして音の美しさと響きの透明感といった点にあるだろう。また、ユーモアや熱いものを十分に持っていながら、泥臭さとは無縁で、ハメを外すことなく節度の中でそれらを表現する。その持ち味は、時に冷静さが勝ったように感じさせることもあるが、嵌まった時の完成度、説得力はことのほか高い。とりわけ精密なサウンド・コントロールが必須の楽曲やコンテンポラリーに格別のうまさを見せるのは、テクニックのみならず、作品の構造を見抜く分析力、響きのバランス感覚が人一倍優れているゆえだろう。その他にも、バーバーのソナタを取り上げたり、シマノフスキとサティでプログラムを組んでみたりと、個性的でインテリジェントなレパートリーやプログラム・ビルディングも面白い。そんな彼のデビュー・アルバムは、まさに“久末らしさ”が溢れていて嬉しくなる。メンデルスゾーン、スカルラッティ、メシアン、ラヴェルというのは、それだけでデビュー・アルバムとしてユニークなセットだが、これらは同時に彼が2018、19年にかけて各地で弾き込んできた作品でもある。つまり、どれもが彼の美意識を十全に提示しうる絶妙なセレクションであり、かつ時間をかけて完全に掌中に収めた自信のラインナップというわけだ。この説明は、実際にお聴きいただければ即座に納得されるに違いない。メンデルスゾーンの気品ある情熱と躍動感、特有の憂い、スカルラッティの心地よい軽妙さ、メシアンとラヴェルにおけるサウンドの輝きや色彩、神秘性の追究など、巧みに描き分けられた各曲の美質に惹き込まれるだろう。そして全体を通して共通するのが音色と音楽のキャラクターを自在に操るタッチの精妙さ、生き生きとした声部の描き分け、即座に移り変わる音と息遣いの妙、弱音の美しさである。また、曲の並びもよく練られている。必ずしも人口に膾炙したとは言えない作品を選びつつも、それらを緩急よく配置することで緊張と緩和のリズムを整えて聴きやすくしているのに加え、しばらく聴き続けた先には、スカルラッティの歌に対比するようにメシアンの構造化された響きときらめくような鳥の歌の絡み合ったこの上なく精妙なる世界までもが立ち上がる。そして最後にはアンコールよろしく誰にとっても耳に懐かしい《無言歌集》の〈春の歌〉を添えてくる、この絶妙さ。今「添える」と書いたが、「添え物」では決してなく、この僅か3分ほどの小曲の演奏もまた凝っているのだ。中でも後半に主題がppで戻ってくる際に(50小節目)、ペダルを用いて密やかなムードを作り込み、その後のクレシェンドでの息を吹き返してゆくさまなど実に見事である。このデビュー・アルバムは、久末の名前と才能を改めて世に知らしめるとともに、彼の“次”への期待を増幅させる絶好の呼び水となるだろう。2021年秋 松本 學久末航(ピアノ) Wataru Hisasue、 Piano滋賀県大津市出身。5歳よりピアノを始める。辰巳晴生・美行、村上久仁子、田隅靖子各氏の指導を受け、高校卒業後に渡独。ドイツ・フライブルク音楽大学にてギレアド・ミショリ氏に師事し、学士課程を最優秀の成績をもって卒業。また2015年9月より、パリ国立高等音楽院での交換留学を行い、エマニュエル・シュトロッセ氏に師事した。フライブルク音楽大学ではピアノソロ以外にもログリット・イシャイ、セバスティアン・ハーマン各氏に室内楽を学ぶ。パリ国立高等音楽院では、ピアノソロ・室内楽と並行してバレエ音楽ピアノ即興法を学び、最優秀の成績を修める。2017年より、ベルリン芸術大学大学院にてパスカル・ドゥヴァイヨン、クラウス・ヘルヴィヒ各氏に師事し、修士課程を最優秀の成績をもって修了。国内外のコンクールで受賞を重ねる。第8回ショパン国際ピアノコンクール in Asia小学5・6年生部門金賞受賞。第13回神戸国際学生音楽コンクール最優秀賞および神戸市長賞受賞。第32回ピティナ・ピアノコンペティションJr. G級金賞および讀賣新聞社賞・ソナーレ賞受賞。2009年、京都青山音楽記念館バロックザールにて「久末航ファーストピアノリサイタル」を催し、2009年度京都青山音楽賞新人賞を中学生として受賞。第9回宝塚ベガ学生ピアノコンクール高校生部門第1位および宝塚演奏家連盟賞受賞。第64回全日本学生音楽コンクール高校の部全国大会第2位。第2回ギャニー国際ピアノコンクールグランプリ部門第1位およびMusideco賞受賞。第6回レプティーンピアノコンクール第1位および聴衆賞受賞。第6回マッサローザ国際ピアノコンクール第2位および聴衆賞受賞。第7回リヨン国際ピアノコンクール第1位および聴衆賞受賞。ドイツで最も歴史あるコンクールの一つ、フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ全ドイツ音楽大学コンクールにて第1位およびDeutscher Pianistenpreis賞を獲得。2017年秋には、世界的に権威ある第66回ミュンヘン国際音楽コンクールにて第3位および委嘱現代作品の最も優れた解釈に対して贈られる特別賞を受賞し、一躍注目を浴びる。平成28年度滋賀県次世代文化賞受賞。2017年度大津市文化奨励賞受賞。小島燎氏(ヴァイオリン)とのデュオで2019年度青山音楽賞バロックザール賞受賞。平成25年度平和堂財団芸術奨励賞音楽部門受賞、2015年9月より公益財団法人平和堂財団海外留学助成者。2018/19年度公益財団法人ロームミュージックファンデーション奨学生。カール・ベヒシュタイン財団奨学生。シャネル・ピグマリオン・デイズ2019アーティスト。ソロ・室内楽の両分野に注力し、ドイツ、フランス、スペイン、オランダ、フィンランド、日本などで国際的に演奏活動を展開。バイエルン放送交響楽団、ヴュルテンベルク・ロイトリンゲン管弦楽団、コレギウム・ムジクム・バーゼル管弦楽団、日本センチュリー交響楽団、京都市交響楽団、びわ湖祝祭管弦楽団、インゴルシュタット室内管弦楽団、ミュンヘン室内管弦楽団、シュトゥットガルト室内管弦楽団、プフォルツハイム室内管弦楽団ほか数々のオーケストラと共演。またコンツェルトハウス(ベルリン)、紀尾井ホールで開催されたソロリサイタルはいずれも高い評価を得た。欧州でのさまざまな音楽祭に招かれ、AUDI音楽フェスティバル(インゴルシュタット)、Young Euro Classicフェスティバル(ベルリン)、モーツァルト音楽祭(ヴュルツブルク)、Premiere Rencontre autour du pianoフェスティバル(フランス・グアドループ島)などに出演。(2021年10月現在)アールアンフィニ(ArtInfini)についてアールアンフィニ・レーベルは、株式会社ソニー・ミュージックダイレクトと、株式会社ミューズエンターテインメントとのパートナーシップによるクラシック専門レーベルです。世界的に活躍する才能溢れるアーティストのCDアルバムを定期的に制作、リリースしています。アールアンフィニはフランス語で「永遠の芸術」の意味。一貫してマーケットに迎合することなく、アーティストが表現したいことを純粋に追求しています。制作過程においては、全てのアルバムにおいてDSD方式でプロダクションされたマスターを使用、スイス・マージングテクノロジー社のDAWピラミクスにてDSD11. 2MHz、またはDXDフォーマットでのレコーディングを行っています。マイクロフォンが捉えた信号を極力劣化させないようラインの最短化を図り、ステージ上のマイクロフォンの直近で収録されたアナログ信号をDSD、DXD信号に変換後、RAVENNA(AES67)で伝送しています。また動的リスクを回避するため記録媒体は厳選されたSSDを使用、さらにレコーディング?編集?マスタリングまで全ての電力は、高品位なリチウムイオンバッテリーで供給されます。アナログ、デジタル領域共に、まさに究極とも言える高品位化を実現しています。(2021/11/17 発売)

    レーベル名:ART_INFINI
    カタログ番号:MECO-1067

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    シューベルトを讃えて(鈴木大介)

    万感の思いを馳せて奏でる、シューベルトへのオマージュ
    異才、鈴木大介が長年あたためてきたシューベルトと、シューベルト由来の名曲を編んだオマージュ・アルバムです。本人曰く「夢幻のニュアンスや色彩と空間の広がりを音楽に息づかせることを最重要なテーマとし続ける“クラシック・ギター”という楽器とその役割の真髄へと、僕を導いてくれそうな気がする」というシューベルトへの万感の想いが、あたたかく慈愛に満ちた旋律、端正で優美な官能、幽き無限の情念をもって奏でられます。
    わずかな期間ではあったが、留学時代、僕はザルツブルクから20数キロ離れたハラインという街に住んでいた。ハラインは「きよしこの夜」を作曲したことで有名になったフランツ・グルーバーが後半生を暮らした任地であった。「きよしこの夜」はその作詞者ヨーゼフ・モールのギター伴奏によって1818年に初演されているが、モールの遺産としてグルーバーが受け継いだギターがハラインの博物館には保存してあり、クリスマス・イヴにはそのギターの伴奏によって、街の人々による「聖夜」の歌声が響いた。
    意外なことかもしれないが、「きよしこの夜」の例からもわかるように、オーストリアではギターは日常的な和声楽器だった。19世紀のウィーンでマウロ・ジュリアーニやヨハン・カスパル・メルツ、ヴェンツェスラウス・トマス・マティエカをはじめとする多くのギタリストが活躍できたバックグラウンドもそのような土壌にあったのだろう。
    1918年にリヒャルト・シュミットがライプツィヒで出版した「10のシューベルト歌曲~ある音楽史的なスケッチ“ギタリストとしてのシューベルト”付きの~(10 Schubert=Lieder fur Gitarre mit einer musikhistorischen Skizze Franz Schubert als Gitarrist)」に寄せた長大な巻頭序文に端を発したとされる論争は、フランツ・シューベルトの作品に分類番号を与えた音楽学者オットー・エーリヒ・ドイチュによる論述「シューベルトにギターはない(Schubert ohne Gitarre)」ほか様々な研究者によって当初から否定されたにもかかわらず、シューベルトがギターを愛した、というステレオタイプは多くの人々に根強く支持されている。シューベルトとギターの距離を近づける論拠には、以下のような事実が基になっていると考えられる。1.1821年に自身もギタリストであったアントン・ディアベリがシューベルトにとって初の歌曲集を出版した際、4曲を選んでギター伴奏版を編曲し出版したこと。その後もディアベリやメルツ、ナポレオン・コストらによる歌曲のギター伴奏編曲が出版されていたこと。
    2.シューベルト自身がギターを所有していたこと。ギターのチューニングで6本の弦を持つチェロのような形状の“アルぺジョーネ”という楽器の開発者ヨハン・ゲオルク・シュタウファーのギターもその中にあり、シューベルトの弟のヴァイオリニスト、フェルディナンドを経由して前述のシュミットの父へと譲られていたこと。またそのアルペジョーネのために有名な「アルペジョーネ・ソナタ」をシューベルトが作曲していること。
    3.1918年に発見されたフルート、ヴィオラ、チェロ、ギターのための「カルテットD.96」やシューベルトが父の聖名祝日のために書いた「カンタータD.80」などのギター・パートの存在(しかしながら1931年にD.96は先述マティエカによるフルート、ヴィオラ、ギターのための「ノットゥルノ」にチェロ・パートを書き加えた編作であることが判明)。
    4.「セレナーデ」や「アヴェ・マリア」にみられるような複声による分散和音の歌曲伴奏音形が、ギターの典型的な奏法を彷彿とさせる語法と感じられること。

    ドイチュが若干の強引さまでをも動員して徹底論破したシューベルトとギターの親密さは、しかしながら上記のようなギター愛好家サイドの言い分を含めてこのCD録音のテーマとはまったく関係がない。むしろ、なぜ人々はギターとシューベルトの幸福な結びつきを信じたくなるのか、シューベルトの音楽にはそう思わせるだけの、他のドイツ系の作曲家にはない何かしらの要因があるのではないか、ということに僕の興味はあるからだ。そしてその“何らかの要素”は、非常に限定された機能の中で、夢幻のニュアンスや色彩と空間の広がりを音楽に息づかせることを最重要なテーマとし続ける“クラシック・ギター”という楽器とその役割の真髄へと、僕を導いてくれそうな気がするためでもある。
    解説:鈴木大介


    鈴木 大介(ギター) Daisuke Suzuki (Guitar)
     作曲家の武満徹から「今までに聴いたことがないようなギタリスト」と評されて以降、明晰な解釈力と洗練された技術によって常に注目を集め続けている。
    1992年、スペイン/バルセロナ・マリア・カナルス国際コンクール第3位、1993年、アレッサンドリア市国際ギター・コンクール優勝。 
     現代音楽の初演も多く、武満徹作曲「森のなかで」「スペクトラル・カンティクル」の世界初録音をはじめ、これまで、池辺晋一郎、西村朗、猿谷紀郎、伊左治直、林光、酒井健治、渡辺香津美の各氏他多くの作曲家による新作を初演している。1995年のデビュー以降、長きにわたり、アンサンブルとコンチェルトの膨大なレパートリーでの、難度の高いプロジェクトにおけるファースト・コール・ギタリストの位置を維持し続けている。
     オリジナル作品の演奏のみならず、武満徹の映画音楽をギター(またはギター・デュオ)のために原曲のスコアからアレンジするプロジェクトを1999年より継続的に行っており、これまでに3タイトルのCD(「どですかでん」「夢の引用」「森のなかで」)をリリースしている。
     美術館でのコンサートも数多く行っており、特に都立現代美術館での「田中一光回顧展」(2003年)、国立新美術館での「オルセー美術館展」(2010年)、ブリヂストン美術館での「ドビュッシー、音楽と美術展」(2012年)では、展示作品のテーマに即したプログラムをプロデュースし、大きな話題となった。
     斬新なレパートリーと新鮮な解釈によるアルバム制作はいずれも高い評価を受け、「カタロニア讃歌~鳥のうた/禁じられた遊び~」は2005年度芸術祭優秀賞(レコード部門)を受賞。2012年、板倉康明指揮東京シンフォニエッタと初演した西村朗作曲「天女散花」のライヴ盤は2013年度のレコード・アカデミー賞(現代音楽部門)を受賞。
     近年はタンゴやジャズ、また自作品によるライヴ演奏も行い、2016年にCDリリースされ翌年出版された「12のエチュード」他の自作品も絶賛されている。また多くの名曲のアレンジは録音やコンサート共に好評で、内外のギタリストにも提供し演奏されている。
     これまでにNHK-FM「クラシック・リクエスト」(1999年~2001年)、「気ままにクラシック」(2002年~2008年)のパーソナリティも務めた。
     第10回出光音楽賞、平成17年度芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。
     洗足学園音楽大学客員教授。
     横浜生まれ。ギターを市村員章、福田進一、尾尻雅弘の各氏に、作曲を川上哲夫、中島良史の両氏に師事。ほかに、ザルツブルク・モーツァルテウム音楽院においてエリオット・フィスク、ホアキン・クレルチの両氏に師事。
    (2020年2月現在)
    (2020/03/18 発売)

    レーベル名:ART_INFINI
    カタログ番号:MECO-1058

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    ダンツァ(新倉瞳)

    人気チェリスト、新倉瞳が心から慈しむ「舞曲」をテーマにしたアルバムです。民俗音楽、バレエ音楽、シシリエンヌ、ワルツ、タンゴ等々、古今東西、歴史の淘汰を受けながら連綿と受け継がれてきたクラシック音楽の「舞曲」を、新倉瞳のチェロが朗々と歌い、そしてひっそりと心に染み入るように奏でます。選りすぐりの「舞曲」の名曲を心ゆくまでお楽しみ下さい。アルバムに寄せて  新倉 瞳幼少期から踊ることが好きだった私は、音楽のジャンル問わず「舞曲」と名前のついた曲がかかるとだいたい身体が動き出してしまっていました。また、どんなジャンルの音楽にも、名曲には tantsndik, zingendik, redndik (イディッシュ語で踊る、歌う、話す)があると、クレズマー音楽のパイオニアであるAlan Bern(アラン・バーン)さんが教えてくださったことを最近身をもって感じていて、そして近年イディッシュ・ダンスも踊るようになり、改めて踊りと音楽の結びつきを痛感していたので、今回のアルバムを創るにあたり、テーマは「ダンスしかない!」と思いました。三拍子の曲でも多少の揺れがあってほぼ五拍子に感じた方が踊りやすかったり、頭で理解するだけでなく身体中で感じることで、ようやくその踊りのグルーヴの波にのれるように思います。この世に伝わる踊りは様々で、数えきれないリズムや様式があり、まだまだ私が経験したことのない踊り、知らない踊りがたくさんあります。今回は、民俗音楽、バレエ音楽、シシリエンヌ、舞踏曲、タンゴ…各踊りの情景、薫り、匂い、色彩…イメージたっぷりで取り組み、今までの経験が活かされたこと、改めてまた勉強になることがあった時間でした。このアルバムを聴いて頂いた皆さまと共に、優しく、激しく、切なく、フワッと一緒に踊ることができますように。小学生の頃からの友人で尊敬するピアニストの梅村百合さん、レコーディング・チームの皆さまに心より感謝申し上げます!(2020/11/25 発売)

    レーベル名:ART_INFINI
    カタログ番号:MECO-1060

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    ドビュッシー: 前奏曲集(全24曲)(横山幸雄)

    透徹したドビュッシー美学の発露と昇華。パリ国立音楽院直系の系譜を引き、今や巨匠の域に到達しつつある横山幸雄のドビュッシー前奏曲集第1集、第2集全24曲です。一切の虚飾を排した透徹した美学の結晶である本ディスクは、まさにドビュッシー没後100 年の最後を飾るにふさわしい名盤となりました。DSD11.2MHz(DSD256)フォーマットの超ハイレゾ・レコーディングにより、横山幸雄の美音を余すところなく捉えたそのハイ・フィデリティは、まさに聴くものを圧倒します。数あるドビュッシーのディスク・ストーリーにおいて、今ここに新たな歴史が誕生しました。(2018/12/12 発売)

    レーベル名:ART_INFINI
    カタログ番号:MECO-1052