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フランツ・リストに魅せられた若きピアニスト ゴラン・フィリペツ・インタビュー

 

●フランツ・リストに魅せられた若き天才ゴラン・フィリペツ

1981年クロアチア生まれのピアニスト、ゴラン・フィリペツさん。
彼は、既に NAXOS系列レーベルの「GRANDPIANOレーベル」から イーヴォ・マチェクの作品集
NAXOSで絶賛継続中のリスト:ピアノ作品全集第42集

この2タイトルをリリース、その素晴らしいテクニックと、音楽性に圧倒される人が続出。
その上、リストの作品集は2016年度ブダペストのハンガリー協会(Ferenc Liszt Society in Budapest)でのレコード大賞、グランプリ受賞という栄誉に輝きました。
9月に上野で開催された演奏会に出演するために来日中のフィリペツさんをお招きし、色々とお話を伺いました。

- はじめまして。まずはブダペストのハンガリー協会(Ferenc Liszt Society in Budapest)でのレコード大賞、グランプリ受賞おめでとうございます。リストの作品の詳細については、後ほど伺いますが、とりあえず歓びの声をおきかせください。

フィリペツ:
とても光栄に思っております。リスト協会の39回目のアワードであり、2015年に世界中でリリースされた「リスト作品」のCDの中から15タイトルがエントリーされ、その中から大賞を獲得できたということは本当に嬉しいです。これまでこの賞を獲得したのは、ウラディミール・ホロヴィッツ、ウラディミール・アシュケナージ、マウリツィオ・ポリーニ、クラウディオ・アラウをはじめとした錚々たる顔ぶれであり、私もその中の一員に加えてもらったことに大変感激しております。

- もちろん、NAXOSにとっても非常に光栄なことです。本当におめでとうございます。
そのリストの作品以前にリリースされたマチェクのアルバムですが、現代的でありながら、ロマンティック。本当に美しいメロディに満たされた音楽だと思います。しかし、作曲家の知名度はほとんどありません。この作品を録音しようと思ったきっかけを教えてください。
マチェクはユーゴスラビアの作曲家ですが、共感する部分も多いのでしょうか?

フィリペツ:
クロアチア国内でも忘れられている作曲家です。しかし、私はこの作品にとても関心を抱いております。初めて彼の作品に触れた時に、なぜ、このような作品が取り上げられないのかとても不思議に思いました。そして2014年が彼の生誕100年の年であったため、この曲をもっと聴いてもらおうと思い、録音を決意したのです。

- マチェクはユーゴスラビアの作曲家とされていますが、本当はクロアチア出身なのですね。この辺りは国の歴史をもっと勉強する必要を感じます。そのクロアチアの音楽はハンガリー民謡と似た雰囲気を持つとされていますが、実際にはどんな感じですか?

フィリペツ:
北部の音楽は確かにハンガリーの民族音楽の影響を受けています。そして南部はイタリアの影響ですね。南部と北部とはかなり違いますよ。

- どちらも情熱的ということでしょうか?

フィリペツ:
いろんな意味で「情熱的」であり、心をこめてといった感じですね(笑)。

- Grando Pianoレーベルは、知られざるピアノ作品に光を当てるというコンセプトで設立されましたが、他にも紹介したい作曲家はいますか?

フィリペツ:
私はとにかくメロディの美しい作品、心を打つ作品などに心魅かれますので、作曲家にこだわらず色々と演奏してみたいと思います。それには自分がそういう作品と出会うことが必要です。人生と同じく「いい物を選択する」というのは、とても難しい。色々と探し求めているところです。ただ、幼い頃からリストがとても好きなので、まずはリストをもっと極めたいと思います。

- フィリペツさんはケルン、ハーグ、モスクワで学んだということですが、ピアニストになろうと決意したのは何歳ころでしょう?

フィリペツ:
私が音楽に進もうと決意したのは恐らく11歳頃。おぼろげながら道が見えてました。しかし両親はまだそれに気がついていませんでした。

- 日本ではピアニストを目指すなら、2.3歳の頃から特訓し、ひたすら練習することが求められています。

フィリペツ:
10歳前は将来を考えることはしませんでしたね。色々なことにトライし、何をやりたいのかのんびり考えていました。3歳からピアノは弾いてましたが、練習を強制されたことはありませんし、いつも楽しく練習していました。それが良かったのかもしれません。とにかく楽しいものでした。

- その後、多くの師と出会ったのですね。最も影響を受けたのはどなたでしょうか?

フィリペツ:
日本でも良く知られるオクサナ・ヤブロンスカヤにはイタリアにいたときに出会い、たくさんの事を教えていただきました。彼女の息子で才能ある指揮者、チェリスト、ドミトリ・ヤブロンスキーも良く知っています。そうそう、オクサナ・ヤブロンスカヤも前述のリスト協会での賞を獲得していて、その点でも誇りを感じています。

- リストのアルバムについて、お伺いいたします。
今回受賞したアルバムは、パガニーニにまつわる練習曲を2種類収録したものです。
実は、私が2007年にNAXOSに入社する前から、この「全曲録音」のシリーズには注目していました。なぜかというと、多くの人は「パガニーニ大練習曲」を演奏するのみで、初稿の「パガニーニ超絶技巧練習曲」についてはほとんど演奏する人はいません。その理由はなんと言っても難しすぎることに尽きるでしょう。有名な「ラ・カンパネラ」に関しても、「超絶技巧練習曲」の版は似て異なるもの。正直「良く録音したな・・・」と舌を巻いたのです。
この録音を決意した経緯を教えてください。

フィリペツ:
これは、NAXOSから「リストを録音したいのだったら、現在これだけの曲が残っている」とリストを渡された中に、運よく2種のパガニーニ練習曲が残っていたためです。私は見た途端、即「これを録音します」と挙手しました(笑)。

- それはすごい。この「超絶技巧」ヴァージョン全曲は、これまでにも4人しか録音はしていないはずです。とりわけ第4番の第2稿は普通の人には演奏できないとまで言われていますよ。完璧な録音はMP3のみとも言われています。
演奏には苦労しませんでしたか?

フィリペツ:
ああ、あのパラパラパラパラ(メロディを口ずさむ)ですね。

- そうです。日本のピアニスト、ロシアのピアニスト、あとイギリスのレ・・・(英国リスト協会会長、リスト全曲録音あり)

フィリペツ:
正直、イギリスのピアニストには負けたくありませんでした。この曲はひたすら練習すれば完全に弾けるという自信もありましたが、何より私が大切にしたいのは、いかにこの曲を音楽的に演奏するかということです。たくさんの要素を孕んだ作品ですが、どの部分を大切にするかがポイントです。実際の楽譜を表現するのはもちろん、音響と解釈に重点を置きました。譜面を完璧に再現することも大切かもしれません。しかし、それよりも大切なことがあると思います。

- 日本人は、特に最近の傾向は「譜面どおりに鍵盤を押さえる」ことに注力している感があります。そのようなテレビ番組もあったりするのです。

フィリペツ:
僕自身の考えとしては、20世紀初頭のピアニストの演奏のように、ミスタッチがあろうとも、音楽があれば良いように思います。良い音楽として再現することが大切です。

- 日本では「ラ・カンパネラ」がとりわけ人気なのですが、フィリペツさんのアルバムでは、初稿版と現行版の2つの聴き比べができますね。2つの版の違いや、聴き所を教えてください。

フィリペツ:
この2つは全く違う音楽です。初稿版ではパガニーニの「第1番」、「第2番」の2つの協奏曲から楽想が取られています。なので途中で大きく曲が変化してしまいます。現行版は第2番のみの音楽が使われています。ただ、どちらが良いかと言われると、「両方楽しんでください」という他ありませんが、どうしてもということなら現行版をオススメします。

- その理由は?

フィリペツ:
現行版の方が繊細であり、リスト特有の書法が溢れています。初稿版にはツェルニーの影響が感じられ、どうしても借り物感があるのですが、現行版はもっと洗練されており、またリスト特有のくせのようなものも感じられます。初稿版はパガニーニのクレイジーさが現れているように思います。まずは聞き比べてみてください。面白いですよ。

- リストについては、私も好きなので話を始めたら終わらなくなりそうです。 また、いずれ機会がありましたらお話をうかがわせていただけたら嬉しいです。
今後の録音、コンサート予定を教えてください。

フィリペツ:
来年6月、NAXOSからスカルラッティのソナタをリリースする予定です。あとはリストの舞曲集の録音も予定されています。年内にはアルゼンチンとクロアチアでコンサートを開催します。そして来年1月にはパリで演奏します。

- 今、熱中していることはありますか?

フィリペツ:
料理です!実は私はコックです。創造性を刺激されますよ。味噌スープならまかせてください。まだまだですが。 イタリアンも得意ですよ。

- 最後に日本の聴衆に一言お願いします。

フィリペツ:
いい音楽を長く楽しんでいただけたら嬉しいです。

【9月23日 17時30分~ ナクソス・ジャパン 会議室にて インタビュアー:吉田早苗】



■リスト:ピアノ曲全集 第42集 パガニーニ練習曲集

ゴラン・フィリペツ(ピアノ)

発売日:2016年4月27日
品 番:8.573458
価 格:オープン


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■イーヴォ・マチェク:ピアノ作品全集&ヴァイオリン・ソナタ

ゴラン・フィリペツ(ピアノ FAZIOLI)

シルヴィア・マッゾーン(ヴァイオリン)

発売日:2014年11月25日
品 番:GP681
価 格:オープン


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