~2018年開催「第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール」で第2位入賞。フォルテピアノ奏者、 川口成彦のソロ・アルバム~
川口成彦がこれまでのコンサートでライフワークとして取り組んできた、自身こよなく愛するスペインの知られざる作品を集めたアルバムです。イタリア人ながら半生はスペインで活躍したドメニコ・スカルラッティ(1685-1757)、そしてアントニオ・ソレール(1729-1783)らの時代から、傑作「イベリア」を残したイサーク・アルベニス(1860-1909)の登場までおよそ100年の間、大きな動きの見えないスペイン鍵盤音楽の歴史ですが、実際には当時の人々の生活と息遣いを感じることの出来る素晴らしい音楽がたくさん生まれていました。ちょうどその時代を生きた芸術家の一人が、画家のフランシスコ・デ・ゴヤ(1746-1828)で、彼の生きた時代のスペインには一体どのような音楽が、どのような音で奏でられていたのだろう、というのがこのアルバムのコンセプトとなっています。使用楽器にも大きなこだわりがありま す。スペインの音楽をピリオド鍵盤楽器で、となると、地理的に近いウィーン式のヴァルターなどがよく使用されますが、18世紀にはスペイン王家にイギリスのブロードウッド社からピアノが贈られていたり、当地の楽器製作者がイギリスのスクエアピアノに影響を受けていたらしいことが分かっており、これを踏まえ、ここではイギリスの楽器が選択されました。作品、楽器、解釈と全てにおいて幅広い探求を行い、そこから得た深い共感を持って表現された作品の数々。多くは5分にも満たない小品ですが、そのどれもがきらきらと輝く魅力を放つ、美しくも心沸き立つアルバムです。
■レコーディング
2018年4月3-5日 ドープスヘジンデ教会(オランダ、ハーレム)
■使用楽器
ジョン・ブロードウッド&サン 1792年製(エドウィン・ベウンク氏修復)…トラック1-3、8、11-14
クリストファー・ゲイナー スクエアピアノ 1780年頃製 (オラフ・ファン・ヒース氏修復)…トラック4-7、9、10
■川口成彦(かわぐちなるひこ)
1989年に岩手県盛岡市で生まれ、横浜で育つ。現代のピアノのみならず、フォルテピアノやチェンバロ、クラヴィコードといった歴史的な鍵盤楽器を用いても演奏活動を展開している。第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール第2位(2018年)、ブルージュ国際古楽コンクール・フォルテピアノ部門最高位(2016年)、第1回ローマ・フォルテピアノ国際コンクール〈M. クレメンティ賞〉優勝(2013年)はじめ数多く受賞。フィレンツェ五月音楽祭、モンテヴェルディ音楽祭(クレモナ)、ユトレヒト古楽音楽祭、ゴルドベルグ音楽祭(グダニスク)等、欧州の音楽祭にも出演を重ねる。
2018年には自主レーベルMUSISを立ち上げ、バルトークの『2台のピアノと打楽器のためのソナタ』が記念すべき第一弾としてアナログレコードでリリースされる。また古典期からロマン派初期におけるスペイン人作曲家の知られざる作品の演奏および研究も積極的に行い、2019年に『ゴヤの生きたスペインより』をリリース。アムステルダム在住。
◆特集記事~川口成彦の最新録音「ゴヤの生きたスペインより」リリース◆
e-onkyo music/mora