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セバスティアン・ヴァイグレ氏 読響常任指揮者就任 記者会見の様子

読売日本交響楽団 第10代常任指揮者
セバスティアン・ヴァイグレ氏 記者会見を聴いて


2018年5月28日(月) 14:00~ 場所:東京芸術劇場 シンフォニースペース

2019年4月1日付で読売日本交響楽団の第10代常任指揮者に就任するセバスティアン・ヴァイグレ氏(1961-)。
オペラとシンフォニーの両面で目覚ましい活躍を続けるマエストロです。
ヴァイグレ氏はご自身の経歴と意欲を熱く語ってくださいました。


――― 過去にはずっとオペラを指揮していましたが、最近ではコンサートを多く指揮しています。フランクフルト歌劇場で10年ずっと演奏してきましたが、「コンサートをもっと振りたい」と思っていたところ、読売日本交響楽団から話をいただきました。

読響は素晴らしいオーケストラであり、過去にも何回か演奏していますが、リハーサル→本番で感じるのは、常にオーケストラが全力投球であることです。新しいリハーサル会場も楽しみです。

2019年、就任してからはまず、ドイツのレパートリーを演奏します。予定されている作品の中ではヘンツェの「七つのボレロ」が楽しみです。こちらは2000年に読響が日本初演した作品ですが、とてもやり甲斐のある曲です。そして9月にはハンス・ロットの「交響曲」を取り上げます。私はこれまでにこの曲を9つのオーケストラと演奏してきており、ロットを紹介すすることを使命と感じています。その翌年にはブラームスとリヒャルト・シュトラウスを予定しています。オーケストラと熟考の上で決定したプログラムであり、これらの演奏をとても楽しみにしています。また、2017年の《ばらの騎士》に続き、2019年には二期会と《サロメ》を演奏する予定もあります。

オペラも演奏機会を持ちたいのですが、なかなか難しいので、私が指揮しているフランクフルト歌劇場の歌手を呼ぶことも考えています。またメインのプログラム以外は決定していませんが、協奏曲では世界中の名手を招聘するとともに、日本の若手とも共演したいと考えています。



今回の来日がなんと21回目(!)というヴァイグレ氏。
もともと、音楽一家の出身(指揮者イェルク=ペーター・ヴァイグレの甥で、弟はヴィオラ奏者の故フリーデマン・ヴァイグレ)で4歳半からピアノの椅子に座らされたと語るヴァイグレ氏。しかし早々にピアノに見切りをつけ、ホルンの道に進みました。曰く「音楽学校ではファゴットとホルンの部門しか空いてなかった」とのこと。しかしそれが彼にとっては良かったようで、すぐに才能を発揮し、そのまま素晴らしい奏者へと成長したのでした。

そして、実は1980年代からベルリン・シュターツカペレのホルン奏者として来日し、演奏をしていたというヴァイグレ氏。初めて指揮者としてデビューしたのは1897年のベルリン・シュターツカペレの来日公演《魔笛》の時でした。当時、ホルン奏者として演奏しながら、巨匠バレンボイムのアシスタントも務めていた彼、バレンボイムが「この《魔笛》を振らないか」と背中を押してくれたのだそうで、その意味でも日本には格別の思い入れがあるそうです。
そもそも、なぜバレンボイムのアシスタントになったのか・・・それは当時バレンボイムのアシスタントを務めていたシモーネ・ヤングとアッシャー・フィッシュの推薦があったからだそうで、実はホルン奏者と指揮のアシスタント、二足のわらじを履くのはとても大変であり、毎日忙しすぎて、ほとんどプライヴェートの時間は取れなかったのだとか。しかし最も尊敬する音楽家はバレンボイムです。と答えたヴァイグレ氏、その時の経験は彼にとってとても貴重なものとなっています。

質疑応答で「ホルンは披露しませんか?」と質問された時、「10年吹いてないと、なかなかうまく吹けなくて」と苦笑していたヴァイグレ氏。ホルンは好きだけれど、今は指揮に全力投球したい様子です。


1時間ほどのインタビューと質疑応答から見えてきた未来の読売日本交響楽団
とても楽しみです。(NAXOS 吉田)