絢爛・官能・昇華……指揮者・宮本文昭、堂々のデビュー
まさに手に汗握り、心ふるえるブラスの一大絵巻!
百戦錬磨のプロ同士による初タッグ !
いうまでもなく、オーケストラは、指揮者によって響きや色彩感が変わる。
1990年代後半、N響は、それまでのドイツ系に対し、初めて、フランス音楽を得意とするスイス人指揮者シャルル・デュトワを迎え、音色を一変させた。
吹奏楽も同じだ。今や人気絶頂のシエナ・ウインド・オーケストラにとって、宮本文昭とは、今回が初めてのタッグだった。
シエナにとって、宮本が今までの指揮者とちがっていたのは、彼が5年ほど前まで「管楽器(オーボエ)奏者」だったことだ。吹奏楽は管楽器を主体とする編成である。まさに指揮者と演奏者が同じジャンルのプロフェッショナル同士というわけだ。
たとえば、本盤中の「威風堂々」」第1番、トリオ(中間部)をお聴きいただきたい。実にゆったりとしたテンポで、じっくり演奏されている。スピード感あふれる演奏を得意とするシエナとしては、珍しい響きだ(アマチュア・バンドだったら、すぐに息切れし、破綻するテンポである)。どうも宮本は、自らが管楽器奏者だからこそ、どこまで引っ張れるかを十分心得ているようだ。その意味で、今回の初タッグは、コラボでありながら、百戦錬磨のプロ同士が、腕試しを楽しんでいるような面も感じられるのだ。
宮本文昭が、このような、ベーシック名曲を指揮したことに、驚いた吹奏楽ファンも多いのではないだろうか。
果たして、どのような響きが展開するのか……さあ、宮本&シエナの新しい世界を、さっそく聴いてみようではないか。 (富樫鉄火)