2005年のショパン国際ピアノコンクール第4位入賞から7年の歳月を経て、満を持して開示する関本昌平のブラームス後期ピアノ作品集。ブラームスの最大の理解者であったクララ・シューマンは作品119-1を「灰色の真珠(グレイ・パール)」と表現したが、それは作品119-1だけではなく、最晩年のブラームス作品全てにあてはまると言っても過言ではない。「灰色の真珠」とは、若き日のような輝きはなく曇っているが、その本質は極めて深く、より深みを増して輝く宝石のようだという意味であるが、関本のブラームスは慈愛に満ち、祈りにも通じる深遠な音楽を表出させている。霊気すら感じる凄まじいその音楽の昇華は、我々に最晩年のブラームスの命の告白を聴かせてくれるのである。2012年5月、クララ・シューマンの名を冠した「クララ・ザール」でのセッションレコーディング。