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細川俊夫:管弦楽作品集第2集

2014年10月22日発売


細川俊夫(1955-)

1. オーケストラのための「夢を織る」(2009) – 世界初録音


2. 室内オーケストラのための「開花 II」(2011)


3. オーケストラのための「循環する海」(2005)
– 世界初録音


ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団(1&2)/フランス国立リヨン管弦楽団(3)

準・メルクル (指揮)

 

録音:2013年6月10日-12日
スコットランド・グラスゴー ヘンリー・ウッド・ホール(1&2)

録音:2007年7月15日
フランス・リヨン オーディトリウム・ド・リヨン(3)

品番:8.573276J
発売日:2014年10月22日
(※作曲者による日本語楽曲解説付き)

 

●細川俊夫 : 管弦楽作品集第2集

現代日本の作曲家の中でも、ワールドワイドで最も高い評価を受けている人といえば、やはり細川俊夫(1955-)であることは間違いありません。彼の作品には、日本的な要素(音色も思考も)が極めて多く用いられているのですが、その語法の巧みさと真摯さによって、それらが言葉の壁を越えて世界中の人々へと伝播しているのですから。
ここに収録された3つの作品は、それぞれ異なる源泉から生まれています。「夢を織る」は彼自身が母の胎内にいた時の仄かな記憶とも夢とも取れるもの。永遠の揺りかごである子宮の中に聞こえてくる音は“変ロ音”。柔らかく全てを絡めとっていくようなこの音に包まれながら、彼は大いなる旅に出発するというのです。そして「開花」は彼の得意とする花がテーマとなった曲。花が開くときに必要とする莫大なエネルギーを生きる力に変換するという繊細で遠大なる作業…これについての考察です。そして「循環する海」。こちらは水の姿の変容を音に映したものであり、「海を出発してまた海へと還る」というひたすら永遠に繰り返される現象が言葉を介さず、音だけで描かれていきます。聴き手はこのアルバムで、たくさんのことを考えることができるでしょう。
CDには作曲者自身による日本語楽曲解説が同梱されています。

 

●楽曲について(作曲者による日本語解説より抜粋)

・オーケストラのための「夢を織る」(2009)
この作品は、ロシュの委嘱により、ルツェルン音楽祭【Lucerne Festival】とカーネギー・ホール【Carnegie Hall】のために、2009年6月から12月にかけて作曲された。ルツェルン音楽祭の音楽監督ミヒャエル・ヘフリガー【Michael Haefliger】に捧げる。私はかつて、母の胎内にいる夢を見た。その夢で私は、母の温かい胎内にいることの喜び、しかしやがて生まれなければならないプレッシャーや強迫、そして生まれ出る過程の苦しさや痛みを通過してこの地上に生まれる喜び、といったことを体験した。それはいつまでも心に残る深い体験であった。それは、私が日常で体験する感情体験より深く、人間の根源的な感情に触れる体験であった。その夢の体験を私はかつて8人の奏者のための《ドローイング》【Drawing】という作品で実現したが、今回はより大きな編成であるオーケストラで、もう一度音楽化してみようとした。

・室内オーケストラのための「開花 II」(2011)
この作品は、エディンバラ芸術祭の委嘱作品で、スコットランド室内管弦楽団の指揮者、Robin Ticciatiのために作曲したもの。この《開花II》は2007年に東京カルテットの委嘱で作曲した弦楽四重奏曲《開花》をベースとして、それを自由に室内オーケストラへ書き換えていった。私には、いくつかの「花」をテーマにした作品がある。花が「開花」に向かって、全エネルギーを集中させる。それは静かな目覚めの時なのだが、 私には極めてダイナミックな音楽的なうたが、そこに生まれているように感じられる。

・オーケストラのための「循環する海」(2005)
この作品は、ザルツブルク音楽祭の委嘱作品として、2005年初頭に作曲し、ペーター・ルジツカに献呈した。2005年8月20、21日にザルツブルク音楽祭で、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ヴァレリー・ゲルギエフ(指揮)によって世界初演された。水は海から、蒸発して空に上り、それが雲になる。雲はやがて雨になり、再び海へ降り注ぐ。そして嵐になり、海は荒れ狂う。やがて嵐は静まり、海は深い静けさを取り戻す。そして水は再び海上から霧となって空へ立ち昇る。こうしたイメージが、この音楽の基礎となった。 私はこの循環する水の軌跡を、人の生涯のようにも捉えている。限りなく大きな存在から誕生し、高みに向かって上昇し、それがやがて下降をはじめ、激しい嵐を体験し、再び深い静けさの海へ還っていく。そしていのちは、再び空に立ち昇っていく。この循環するいのちの軌跡を、私は音楽で表現したい。

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細川俊夫(Photo:Kaz Ishikawa)

1955年広島生まれ。1976年から10年間ドイツ留学。ベルリン芸術大学でユン・イサンに、フライブルク音楽大学でクラウス・フーバーに作曲を師事。

1980年、ダルムシュタット国際現代音楽夏期講習に初めて参加、作品を発表する。以降、ヨーロッパと日本を中心に、作曲活動を展開。日本を代表す る作曲家として、欧米の主要なオーケストラ、音楽祭、オペラ劇場等から次々と委嘱を受け、国際的に高い評価を得ている。2004年のエクサンプロヴァンス音楽祭の委嘱による2作目のオペラ《班女》(演出=アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル)、2005年のザルツブルク音楽祭委嘱のオーケストラ作品《循環する海》(世界初演=ウィーン・フィル)、第5回ロシュ・コミッション(2008年)受賞による委嘱作品である2010年世界初演のオーケストラのため の《夢を織る》(クリーヴランド管弦楽団によって、ルツェルン音楽祭、カーネギーホール等で初演)、2011年のモネ劇場の委嘱によるオペラ《松風》(演 出=サシャ・ヴァルツ)、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とバービカン・センター、コンセルトヘボウの共同委嘱による《ホルン協奏曲─開花の時─》と いった作品は、大野和士、ヴァレリー・ゲルギエフ、フランツ・ウェルザー=メスト、サイモン・ラトルなど、世界一流の指揮者たちによって初演され、その多 くはすでにそれぞれのジャンルにおけるレパートリーとして演奏され続けている。

2013年のザルツブルク音楽祭では、二度目となる同音楽祭委嘱作品、ソプラノとオーケストラのための《嘆き》の初演をはじめ、アンサンブル・ウィーン=ベルリン委嘱作品《古代の声》の初演ほか、多くの作品が演奏された。

2001年にドイツ・ベルリンの芸術アカデミー会員に選ばれる。東京交響楽団1998-2007、ベルリン・ドイツ交響楽団2006/2007シー ズン、および西ドイツ放送局合唱団2006-2008シーズンのコンポーザー・イン・レジデンスを歴任。2006/2007年および2008/2009 年、ベルリン高等研究所からフェロー(特別研究員)として招待され、ベルリンに滞在。2012年にはドイツ・バイエルン芸術アカデミーの会員に選出され た。2012年秋、紫綬褒章を受章。ネーデルラント・フィルハーモニー管弦楽団2013/2014シーズンのコンポーザー・イン・レジデンス。

現在、武生国際音楽祭音楽監督、東京音楽大学およびエリザベト音楽大学客員教授。

(ショット・ミュージック株式会社HPより)

 


準・メルクル(Photo:Christiane Höhne)

1959年ミュンヘン生まれ。同世代の指揮者たちのなかで、もっとも人気のある指揮者の一人である。ハノーファー音楽院でヴァイオリン、ピアノ、指揮を学んだ後、1979年から1981年にかけてチェリビダッケにも学び、そこで指揮者としての考え方について決定的な影響を受ける。またミシガン大学で グスタフ・マイヤーにも学んだ。1986年にドイツ音楽評議会の指揮者コンクールで優勝。その後ボストン交響楽団の奨学金を得てタングルウッド音楽祭に参加、レナード・バーンスタイン、小澤征爾に学んだ。

1991年から1994年にかけてザールラント州立劇場の音楽監督を務め、1993年にはウィーン国立歌劇場にデビュー、「トスカ」で圧倒的な成功を収める。その後同歌劇場の常連となり、「蝶々夫人」「マノン・レスコー」「ラ・ボエーム」「トゥーランドット」「パルジファル」「ラインの黄金」「ワル キューレ」「ばらの騎士」「ナクソス島のアリアドネ」などを指揮している。1994年から2000年にはマンハイム州立劇場音楽監督および芸術監督を務め、1996年にはコヴェントガーデン王立歌劇場で「神々の黄昏」を指揮してロンドン・デビュー、1998年には「イル・トロヴァトーレ」を指揮してメト ロポリタン・オペラへデビューするなど、次々にオペラ指揮者としてのキャリアを築いてきた。ウィーン国立歌劇場、ドレスデン州立歌劇場、ベルリン・ドイ ツ・オペラ、バイエルン州立歌劇場に客演。2014年にはハンブルク州立歌劇場にてフィデリオを指揮する予定である。

コンサートでは、ミュンヘン・フィル、ケルン・ギュルツェニヒ管、ハンブルク北ドイツ放送響、バイエルン州立管、ケルン放送響、パリ管、フランス放送フィル、バーミンガム市響などヨーロッパの主要オーケストラに定期的に客演、チューリッヒ・トーンハレ管、チェコ・フィルでの客演デビューを果たす。北米での活躍も目覚しく、ボストン響、シカゴ響、フィラデルフィア管、クリーヴランド響、ダラス響、ボルティモア響、ミネソタ管、モントリオール響、セントルイス響、ワシントン・ナショナル響、アトランタ響、シアトル響などを指揮。2005年から2011年にかけて、6年間フランス国立リヨン管弦楽団の音楽監督を務めた。

(準・メルクル公式HP日本語版より)