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【インタビュー】「蜜蜂と遠雷 音楽集」に携わるプロフェッショナルたち ~ 番外編Vol.2 本屋大賞実行委員会理事・高頭佐和子さん

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たくさんの方からご好評をいただいております「蜜蜂と遠雷 音楽集」。

ナクソス・ジャパンではこれまでに、「蜜蜂と遠雷」の制作に携わったキーパーソンたちにインタビューしてきましたが、ここからは「蜜蜂と遠雷」の世界を彩る各界の方々にお話をうかがう【番外編】をお届けします。

第2回目は、本屋大賞実行委員会理事の高頭佐和子さん。「売り場からベストセラーをつくる!」を合言葉に、全国の書店員がいちばん売りたい本を投票して選ぶという“本屋大賞”。2004年の立ち上げ時から現在に至るまで運営に携わってきた高頭さんに、本屋大賞の裏話をじっくりと語っていただきました。

取材・文●劉優華



高頭佐和子

高頭佐和子●本屋大賞実行委員会理事
Sawako Takato

1972年生まれ。大学卒業後、書店員に。青山ブックセンター、ときわ書房を経て、現在は丸善・丸の内本店に文芸書担当として勤務。2004年の立ち上げ時より、本屋大賞実行委員としても活動している。現在、「小説トリッパー」「小説新潮」などで書評を連載中。





インタビュー


 ────高頭さんが書店員になったきっかけを教えてください。

 子供の頃から本が好きで、書店に行くと必ず、新しいものに興味を持ったり、何か吸収して帰れるのが何よりもの魅力でした。出版社への就職なども考えましたが、大学時代に青山ブックセンターが好きでよく通っていました。「こういうところで働いたら毎日たくさんの刺激があるだろうなぁ」と思い、就職しました。

 著者が作ったものを出版社の人が加工して、運送会社や取次、製本会社といった多くの人の手を介して店舗に届いて、読者の方に最後にお渡しするのが書店の役目。そういう立場でしかできないこともあるということを、長年この仕事をする中でいろんな方々に教えていただきました。


 ────高頭さんは本屋大賞を創設されたメンバーとうかがいましたが、この企画は元々どのようないきさつで始まったのでしょうか?

 私は書店でのイベントを担当することが多く、出版社の営業や編集の方々と会う機会がわりと多くありました。また、他社の書店員とも出版社のイベントなどで交流することもあり、そこで親しくなった人たちで集まって本の話をしながら飲んだりするようになったんですね。そういった出会いの中で、「最近本が売れないね」「皆で力を合わせてお客様と私たちをつなぐきっかけを作れないだろうか?」ということで始めたのが、“本屋大賞”です。

 当初は数名で細々と始めたイベントでしたが、おかげさまで第1回から盛り上がりました。何かやりたい書店員の熱意をおもしろがってくれる方々の協力もあって、書店だけでやっていたら絶対にできなかったようなレベルで広がり、今では多くの読者の方々に楽しみにしていただける賞になりました。あまりに大きくなりすぎて、一抹の寂しさを感じることもありますが、本来の私たちの目標は「お客様に本のおもしろさを知ってほしい」ということ。ふだん書店には行かない方々が、このイベントを通じて少しでも「本屋に行ってみよう!」と思うきっかけになってくれれば、と願っています。


 ────選考は、どのように行われているのでしょうか?

 本屋大賞は、書店員(書店員であれば社長でもレジや経理担当でも可)の投票だけで選ばれる賞で、新刊の書店(オンライン書店も含みます)で働く書店員の投票で決定します。まず、過去1年の間、書店員自身が自分で読んで「おもしろかった」「お客様にも薦めたい」「自分の店で売りたい」と思った本(オリジナルの小説)を1人3冊選び、投票します。その1次投票で1~10位になったものを翌年1月中旬に“ノミネート本”として発表します。その10冊をすべて読んだ上でベスト3を選んでもらって二次投票していただきます。その集計結果で大賞作品を決定するという流れです。

 投票を締め切った後、結果は受賞した出版社と投票書店に伝えられ、書店では公な結果発表と同時に、パネルや拡材などを店舗で貼り出すことができるよう、準備します。また、翌日の朝には「本屋大賞」のオビが付いた商品が書店に搬入されます。他の文学賞は、発表されてから注文をするので、お客様は重版を待たなければならないことが多々あります。本屋大賞は書店のお祭りなので、本屋大賞の報道が出たその日にはお客様に購入していただけるよう、いろいろな工夫をしています。発表当日、会場にはノミネートされた作家さんもいらっしゃいますし、年に1度のイベントを楽しみに地方からわざわざ上京してくる書店員の方も多いです。

 これまでに本屋大賞を受賞した作品はすべて重版がかかり、文庫化されロングセラーになっているものも多いです。

 書店にとってもこのイベントは、毎年“財産”を積み重ねているのではないかと思っています。自分の心を捉えるものが1位の本とは限りません、賞を獲っていない本の中にも良い作品はたくさんあります。多くのすばらしい本の中からお客様が何かに気が付いてくださったり、“宝物”に出会うきっかけを作れたらうれしいですね。



高頭

4月に行われた2017年本屋大賞発表会の様子



 ────2017年の本屋大賞授賞式では、恩田陸さんにアテンドされていたとうかがいました。

 書店員になる前から、恩田さんの本は好きで読んでいました。恩田さんは前回の「夜のピクニック」に次いで2度目の受賞となりますが、初めての受賞でもないし、悲願であった直木賞も受賞された後だったので、喜んでいただけるのか不安でした。ですが、今回の受賞も心から喜んでくださり、私たち書店員の想いを誰よりも理解してくださっているのがすごく伝わってきて、本当にうれしかったですね。当日、恩田さんと話したいという書店員もたくさん来たのですが、ひとりひとりと丁寧にごあいさつもしてくださっていたのが印象的でした。


 ────今回の受賞作「蜜蜂と遠雷」を読んで、どのような感想を持たれましたか?

 文章で表現する技量、熱意、取材力、濃密さが伝わってくる作品です。これほど音楽を聴きたいと思わせるのは本当にすごいですよね。それぞれの登場人物の個性と音楽を丁寧に描いています。時間軸としては、たった数週間のことを描いているにもかかわらず、長く連載されているだけあって、濃密な時間が感じられます。ピアノを弾かない私も登場人物の気持ちにシンクロしてきて、気づくと登場するコンテスタント全員を応援していました。「夜のピクニック」も、いろんな人の感情を丁寧に表現するのがすばらしいと思いましたが、本当に素敵な作家さんです。これは、ぜひCDを聴きながら、もう1度読んでみたいと思います。

 恩田さんは、中高生から40代位までの世代のファンが多いという印象でしたが、「蜜蜂と遠雷」については70代、80代という高い年齢層の方も多くお買い求めになっています。この作品で初めて恩田さんのことを知り、他の作品も読んでみたけどすごくおもしろいというご意見をよくいただきます。今回、「直木賞を獲った作品に本屋大賞が必要か」という声も聞かれましたが、書店員たちが「それでもオススメしたい」という、非常に強い意志を持たずにはいられなかった作品とも言えます。それだけ、吸引力のある本なのではないでしょうか。


 ────高頭さんにとって本の魅力とは?また「蜜蜂」ファンの皆様に、ひとことお願いします!

 本は、文庫なら数百円、単行本でも2000円以内のものが多く、他の娯楽と比べ高価ではありません。でも、時に人生を救ったり、大きな喜びをくれる宝物になります。書店は“宝の山”だと思って日々勤めています。たくさんの方々に、自分だけの宝物を探していただきたいです。ぜひ小説と音楽、両方を楽しんでいただき、書店にも足を運んでいただけるとうれしいです(笑)。



高頭

6月28日に開催した「蜜蜂と遠雷 音楽集」リリース記念イベント、「音楽小説を《聴く》」にゲスト出演。本への熱い想いを語ってくださいました。








*「蜜蜂と遠雷 音楽集」アルバム情報ページはこちら

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*インタビューVol.1 イラストレーター・杉山 巧さんはこちら

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*インタビューVol.2 装丁家・鈴木成一さんはこちら

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*インタビューVol.3 編集者・志儀保博さんはこちら

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*インタビューVol.4 音楽評論家・青澤隆明さんはこちら

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*インタビューVol.5 プロデューサー・劉優華はこちら

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*インタビュー 番外編Vol.1 浜松文化振興財団・伊藤渉さんはこちら

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